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Genitourinary Cancer Today 2022 No.2
第109回日本泌尿器科学会総会:膀胱がん

SY32-3 転移性尿路上皮がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の新展開

菊地 栄次氏(聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科)
更新日:2022年3月15日
転移性尿路上皮がん治療において、ペムブロリズマブは二次治療の中心的薬剤であること、アベルマブは一次治療の切り替え維持療法の中心的薬剤であることが示された。また一次治療での免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と新規治療薬による併用療法が確立される可能性が示唆された。

KEYNOTE-045試験では、再発または転移性尿路上皮がんの二次治療において、ペムブロリズマブは、化学療法に比し全生存期間(OS)の中央値を3カ月延長して予後を改善することが認められ、5人に1人で奏効を示した1)。2019年版「膀胱癌診療ガイドライン」では、ペムブロリズマブは推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aとして二次治療での使用が推奨されている。
最近では、JAVELIN Bladder100試験において、切除不能局所進行または転移性尿路上皮がんに対する一次化学療法後のアベルマブによる維持療法で、OSの中央値は7カ月延長され、化学療法開始からのOSの中央値は26.5カ月であったことが報告された2)。この結果を受け、「膀胱癌診療ガイドライン」2021年アップデートでは、一次化学療法後の病勢進行を認めない患者に対して推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aでアベルマブ維持療法が推奨されることとなった。

一方、IMvigor 211試験では、KEYNOTE-045試験と同様にアテゾリズマブ*の二次治療としての有用性が検討されたが、結果はネガティブであった。また、一次治療についてはKEYONTE-361試験でペムブロリズマブと化学療法併用の有用性が検討されたが、結果はネガティブであった。IMvigor 130試験でもアテゾリズマブと化学療法併用による一次治療の検討がなされており、主要評価項目のうち無増悪生存期間(PFS)は達成し、OSの結果が待たれている。
海外では、ICIはシスプラチン不適格患者にも適応があり、2018年NCCNガイドラインver.3でも記載されていた。しかし、IMvigor 130試験のサブ解析において、PD-L1の発現がない、または低発現の患者では、OSにおいてアテゾリズマブ群と化学療法群との間に有意差が認められなかったことから、2018年NCCNガイドラインver.5では、アテゾリズマブおよびペムブロリズマブはPD-L1の発現を有する患者に限り使用するという適応制限が加えられた。
このように、ICI薬剤による有効性の不一致、シスプラチン不適格患者における有効性の限界など、ICI全体としては疑問の余地は残っている。しかし、2011年から2017年までの化学療法しか治療選択肢がなかった時代では、転移性尿路上皮がんに対して二次治療が行われた割合は17%、三次治療は6%のみであったが3)、ICIが転移性尿路上皮がん患者に使用可能となったことで、死亡60日以内に無治療であった割合が82.6%(2015年)から65.2%(2017年)に減少していること4)が報告されている。ICIが発売されて以降、全身治療を行う割合は増加し、ICIは重要な役割を担っていると考えられる。

EV-301試験では、プラチナ製剤を含む化学療法およびICI治療後の次治療としてエンホルツマブ ベドチン(EV)と化学療法が比較され、EVの有用性が証明された。注目すべきは、対照である化学療法群においてもOSの中央値は約9カ月と長い点である5)。ICI後の化学療法re-challengeの治療成績は良好といえる。この理由の一つとして、抗PD-1/PD-L1作用によってCD4+T細胞が活性化され、腫瘍への血管形成の正常化が生じ、抗がん剤が腫瘍に蓄積、拡散しやすくなることが挙げられる。また、EV-103試験の対象はシスプラチン不適格患者であるにもかかわらず全奏効率73.3%、PFSは12.3カ月と6)、シスプラチン適格患者に対するGCやMVACに匹敵する治療成績が認められている。

菊地氏は、現在第Ⅲ相試験EV-302が進行中であり、一次治療でもICI+EV治療の新しい展開が期待されると展望した。

* 尿路上皮がんは本邦適応外

1)Bellmunt J, et al. N Engl J Med. 2017; 376(11): 1015-26.
2)Powles T, et al. N Engl J Med. 2020; 383(13): 1218-30.
3)Swami U, et al. Cancer Treat Res Commun. 2021; 27: 100325.
4)Parikh RB, et al. Oncologist. 2019; 24(6): e397-9.
5)Powles T, et al. N Engl J Med. 2021; 384(12): 1125-35.
6)Rosenberg JE, et al. ASCO-GU 2020, #441