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Genitourinary Cancer Today 2022 No.2
第109回日本泌尿器科学会総会:膀胱がん

SY32-2 抗体複合薬は進行尿路上皮癌の治療を変えるか―長いトンネルを抜けて―

榎田 英樹氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍学講座 泌尿器科学分野)
更新日:2022年3月15日
抗体複合薬エンホルツマブ ベドチン(EV)は、尿路上皮がん(UC)治療における三次治療として第一選択となりうること、およびEVの一次治療での使用、新規抗体複合薬の臨床試験が進行中であり、抗体複合薬が今後UC治療の主役になる可能性が示された。

膀胱がんに対するGC療法、MVAC療法の有効性が報告されてから20~35年が経過した。2021年に化学療法後のがん免疫療法(IO)メンテナンス治療が本邦でも承認され、進行性UCにおいて全生存期間(OS)を約1年延長することが示された1)。同じく2021年に発売されたEVは、UCの治療をさらに推し進めることが期待されている。
EVは、がん細胞に発現しているネクチン-4を認識する抗体にチューブリン重合阻害薬であるモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合させたもので、がん細胞に特異的に取り込まれて抗がん作用を発揮する。ネクチン-4はUCに多く発現し、EVの第Ⅱ相臨床試験EV-201では、ほとんどの患者で発現が認められ、84%の患者で腫瘍縮小がみられた。
第Ⅲ相試験EV-301では、局所進行性または転移性UC患者608例を対象に白金製剤およびIO治療後の三次治療としてのEVの有用性が検討され、OSはEV群12.88カ月、化学療法群8.97カ月と有意に延長された(ハザード比[HR] 0.70、95%信頼区間[CI] 0.56-0.89、p=0.00142)2)。EV群の奏効率は40.6%、無増悪生存期間(PFS)は5.55カ月といずれも化学療法群に比べ良好な成績であった(奏効率:p<0.001、PFS:HR 0.62、95%CI 0.51-0.75、p<0.00001)2)。このサブグループ解析では、男性、肝転移あり、免疫チェックポイント阻害薬不応の患者に対しても有効であることが示され、一般的な治療困難例に対する有用性が示唆された。
最近、膀胱がんの分子サブタイプを評価することによって治療方針を標準化することが提唱されているが、EVはこの枠組みからは外れ、UC全般に有効性を発揮することが推測される3)。一方、有害事象(AE)としては、末梢神経障害、中毒性皮膚炎を含む発疹、骨髄抑制などが報告されており、末梢神経障害は投与の継続に伴って頻度が高くなると予想されること、皮膚炎等は投与早期から生じることなど、いずれも注意が必要である。

さらに、EVの適応拡大への試みとして、シスプラチン不適格の進行性または転移性UC患者45例を対象に、一次治療でEVとペムブロリズマブを併用する第Ⅰb/Ⅱ相臨床試験が行われ、その腫瘍縮小効果は93%、PFSは12.3カ月、OSは26.1カ月と良好な成績であった4)。この結果を受け、同法はFDAからブレークスルーセラピーに指定され、早期承認が見込まれている。なお、AEについては、皮膚障害、高血糖はほとんどが回復するが、末梢神経障害については3割が遷延することが示されている。これに続き、一次治療における白金製剤適格の転移性UC患者に対するGC療法との比較、筋層浸潤性膀胱がんを対象にした膀胱全摘における周術期での検討など、EVとペムブロリズマブ併用の有用性に関する複数の臨床試験が進行している。

EVに続き、Anti-Trop-2とSN-38の複合体の開発も進んでおり、三次治療としての第Ⅱ相臨床試験TROPHY-U-01(IMMU-132-06)が組まれ、病勢コントロール率約61%、PFS 5.4カ月、OS 10.9カ月など5)、EVと同程度の成績であり、現在第Ⅲ相臨床試験が進行中である。この他、HER2抗体とMMAEの複合体であるRC48-ADC(Disitamab Vedotin)についても第Ⅱ相臨床試験で良好な成績が報告され、第Ⅲ相試験の結果が待たれる。

1)Grivas P, et al. Cancer Treat Rev. 2021; 97: 102187.
2)Powles T, et al. N Engl J Med. 2021; 384(12): 1125-35.
3)Kamoun A, et al. Eur Urol. 2020; 77(4): 420-33.
4)Friedlander TW, et al. ASCO 2021 #4528
5)Tagawa ST, et al. J Clin Oncol. 2021; 39(22): 2474-85.