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Genitourinary Cancer Today 2022 No.2
第109回日本泌尿器科学会総会:前立腺がん

SY30-3 mCRPCに対する化学療法の役割

永田 政義氏(順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学)
更新日:2022年3月15日
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対する化学療法として、早期からアンドロゲン非依存性と考えられる場合の一次治療およびアンドロゲン受容体標的薬(ARAT)抵抗性をきたした患者にはタキサン系薬剤を検討すること、ドセタキセル(DOC)3、4コース後にPSAの30%低下を達成しない患者や自覚する有害事象(AE)が強い患者には早期にカバジタキセル(CBZ)への変更を検討することが示された。
また、CBZの有効性はAR-V7の有無によらないこと、およびタキサン系化学療法を行うことによってAR-V7の陰転化を促し、ARATの感受性が再び得られる可能性も示された。

mCRPCの一次治療では、ARATかDOCのどちらを選択するか検討することになる。選択の指標のひとつとして、Time-to-CRPCが挙げられる。Time-to-CRPCが12カ月未満の患者では、12カ月以上の患者に比べ、ARATの有効性は下がることが報告されている一方、DOCの有効性には統計学的有意差がないことが示唆されている1)。このことから、Time-to-CRPCが12カ月未満の患者の一次治療にはDOCが考慮される。
このほか、早期にタキサン系化学療法を検討すべき患者、つまり治療早期からアンドロゲン非依存性であることを示唆する臨床的指標として、Gleason score 9または10、内臓転移あり、骨転移による骨痛などの有症状やオピオイド使用、PSA倍加時間3カ月未満、ALPやLDH高値、一次治療のARATに対するprimary resistanceが挙げられる。

また、ARAT不応後の治療については、CARD試験において、DOC既使用かつARAT不応の患者に対する三次治療が検討された2)。その結果、CBZはARATよりも全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ、CBZへ速やかに切り替える必要性が示唆された(PFS:ハザード比[HR] 0.54、95%信頼区間[CI] 0.40-0.73、p<0.001、OS:HR 0.64、95%CI 0.46-0.89、p=0.008)。

DOCからCBZへの切り替えのタイミングについては、TAX327試験のサブグループ解析の結果が根拠となりうる。DOCによるPSAの低下率とOSは相関すること、DOC使用3カ月後のPSA低下率30%以上の患者では、30%未満よりもOSが有意に延長されること(HR 0.50、95%CI 0.43-0.58、p<0.001)が明らかにされており3)、これらのデータからDOCを3カ月使用してもPSAが30%以上低下しない場合は速やかにCBZへ切り替える必要があると考えられる。
また、AEの観点からは、CBZでは好中球減少症や発熱性好中球減少症の発現率が高く、DOCでは脱毛、爪障害、神経障害、味覚障害など自覚するAEが比較的高率にみられ4)、DOCで抗腫瘍効果が認められていてもAEの症状が強いため治療継続が困難な患者では、早期にCBZへの切り替えを検討する必要がある。

mCRPC患者の血中循環腫瘍細胞(CTC)におけるAR-V7の存在はARATの耐性機序のひとつであり、臨床的にもAR-V7陽性患者ではエンザルタミドやアビラテロンはほとんど有効性を示さないが、タキサン系薬剤はAR-V7の有無にかかわらず有効性を示すことが明らかにされている5-8)。当科においてmCRPC患者48例を対象としたCBZの有用性を検討した前向き研究でも、CBZ投与3カ月後のPSA変化率からCTCの有無およびAR-V7の有無に独立して有効性を得られることが証明された。
また、タキサン系薬剤の使用によってAR-V7の陰転化を生じることが報告されており、ARATを続けて2剤使用するよりも、タキサン系薬剤へ切り替えることでARATの感受性が回復し、2剤目のARATの有効性を得られることも期待される9)



1)Loriot Y, et al. Eur J Cancer. 2015; 51(14): 1946-52.
2)de Wit R, et al. N Engl J Med. 2019; 381(26): 2506-18.
3)Armstrong AJ, et al. J Clin Oncol. 2007; 25(25): 3965-70.
4)Omlin A, et al. Clin Genitourin Cancer. 2015; 13(4): e205-8. 
5)Nakazawa M, et al. Horm Cancer. 2014; 5(5): 265-73.
6)Antonarakis ES, et al. N Engl J Med. 2014; 371(11): 1028-38.
7)Onstenk W, et al. Eur Urol. 2015; 68(6): 939-45.
8)Antonarakis ES, et al. JAMA Oncol. 2015; 1(5): 582-91.
9)Nakazawa M, et al. Ann Oncol. 2015; 26(9): 1859-65.
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