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Genitourinary Cancer Today 2022 No.2
第109回日本泌尿器科学会総会:前立腺がん

SY29-1 nmCRPC治療の意義

木村 高弘氏(東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
更新日:2022年3月15日
非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)は、転移へ進行する以前の早期から治療を開始することによって全生存期間(OS)が改善されること、また、延命効果のみならずQOLの低下や有害事象の発現などにも留意することが重要であることが示された。

nmCRPCを対象とした最初のランダム化比較試験では、ゾレドロン酸の症候性骨転移出現リスクの抑制効果について検証された。イベント数が少なく、試験は中止となったが、ベースラインのPSAとPSA 増加速度が無骨転移生存期間(BMFS)およびOSの予測因子であることが報告された1)。その後、ハイリスク因子(PSA 8以上またはPSA倍加時間[PSADT] 10カ月以下)をもつnmCRPCに対してデノスマブはBMFSを有意に延長したほか、PSADTが8カ月を下回ると骨転移のリスクが急激に上昇することが明らかにされた2)
一般的に、nmCRPCは、ホルモン療法施行中にPSAの上昇が認められたが、従来の画像検査で遠隔転移が検出されない病態と考えられる。局所治療歴の有無は重要なバックグラウンドであり、リアルワールドデータにおける局所治療施行の割合は、日米でそれぞれ56.1%、54.5%と同程度である3,4)。日本泌尿器科学会「前立腺癌取扱い規約」第5版におけるCRPCの定義は、これまでのPSA値の上昇に加え、欧米のガイドラインと同様に画像上の転移に関する項目が加わる予定である。この根拠は、RADARワーキンググループ*によってPSA値2ng/mL以上となった時に初回画像診断を行うことが推奨されていること、ハイリスク(PSADT 10カ月以下またはグリーソンスコア8以上)nmCRPC患者200例に対してPSMA-PETを実施した検討で、55%に遠隔転移が認められたことなどがある5,6)。一方でhigh volume転移に至らずに経過する症例が存在することも明らかにされている7)

このように、nmCRPC患者はmicrometastasisを診断できない、あるいは進行が緩徐な患者が含まれるが、その治療意義はSPARTAN試験、PROSPER試験、ARAMIS試験で、アンドロゲン受容体標的薬(ARAT)によって無転移生存期間(MFS)およびOSが延長されたことから明らかにされている8-10)。木村氏らの後方視的研究においても、CRPC患者114例を対象に、アビラテロンまたはエンザルタミドをnmCRPC時とmCRPC時に投与開始した患者で比較したところ、nmCRPCの段階からARATを導入することによって無増悪生存期間およびOSが延長された11)。一方、日本人のCRPC患者133例を対象に行った調査では、OSよりも、疲労や骨痛のリスクを軽減させることを治療の優先事項とする患者が多かった12)。アパルタミド、エンザルタミド、ダロルタミドの各第Ⅲ相臨床試験結果のメタ解析では、これらはMFSを50%程度改善するが、有害事象も50%程度増加させることが示されている13)

木村氏は、nmCRPCに対する治療の第一目標はOSの延長であるが、治療に伴うQOLの低下、転移による合併症に対する介入、薬物療法による有害事象の発現、医療費の負担などとバランスをとることが重要であるとまとめた。

* Radiographic Assessments for Detection of Advanced Recurrence:前立腺がんの転移を早期発見するために推奨される画像検査を検討するグループ

1)Smith MR, et al. J Clin Oncol. 2005; 23(13): 2918-25.
2)Smith MR, et al. Lancet. 2012; 379(9810): 39-46. (22093187)
3)Yokomizo A, et al. Int J Clin Oncol. 2021; Nov 15. doi: 10.1007/s10147-021-02070-z.
4)Whitney CA, et al. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2019; 22(2): 252-60. 
5)Crawford ED, et al. J Urol. 2019; 201(4): 682-92.
6)Fendler WP, et al. Clin Cancer Res. 2019; 25(24): 7448-54.
7)Sridharan S, et al. Radiother Oncol. 2016; 121(1): 98-102.
8)Smith MR, et al. N Engl J Med. 2018; 378(15): 1408-18.
9)Hussain M, et al. N Engl J Med. 2018; 378(26): 2465-74.
10)Fizazi K, et al. N Engl J Med. 2019; 380(13): 1235-46.
11)Mori K, et al. Prostate. 2018; 78(10): 766-72.
12)Uemura H, et al. BMC Urol. 2016; 16(1): 63.
13)Mori K, et al. Int J Clin Oncol. 2020; 25(11): 1892-900.
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