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Genitourinary Cancer Today 2022 No.2
第109回日本泌尿器科学会総会:腎細胞がん

SY16-2 進行性腎細胞癌に対するチロシンキナーゼ阻害薬+免疫チェックポイント阻害薬併用療法後の治療戦略

水野 隆一氏(慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室)
更新日:2022年3月15日
進行性腎細胞がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(IO)+チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による一次治療の後続治療は確立されていないが、一次治療に未使用のTKI、二次治療にエビデンスのあるTKIの使用が推奨され、IOのリチャレンジは推奨されないことが示された。

本邦では、進行性腎細胞がんに対するIOを含む一次治療として、イピリムマブ+ニボルマブ、ペムブロリズマブ+アキシチニブ、アベルマブ+アキシチニブ、ニボルマブ+カボザンチニブが用いられる。EAUガイドライン1)ではいずれのリスクにおいても、ニボルマブ+カボザンチニブ、ペムブロリズマブ+アキシチニブ、ペムブロリズマブ+レンバチニブが一次治療の標準治療とされており、イピリムマブ+ニボルマブは中/高リスクの標準治療とされている。さらに、同ガイドラインでは、一次治療後はシークエンス治療を行うことを前提としており、IO+IO、IO+TKI後は一次治療で未使用のTKIを使用することが推奨されていた。2021年にはこれがアップデートされ、IO治療後の二次治療、三次治療についての具体的な選択肢は示されず、VEGF耐性に対してエビデンスのある薬剤を使用することがパネルの推奨として記載されている2)

二次治療の有効性を検証した過去の臨床試験を振り返ると、AXIS試験では、アキシチニブ群、ソラフェニブ群の無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ6.7(95%信頼区間[CI] 6.3-8.6)カ月、4.7(95%CI 4.6-5.6)カ月(層別ハザード比[HR]0.665、95%CI 0.544-0.812、p<0.0001)、METEOR試験では、カボザンチニブ群、エベロリムス群のPFS中央値はそれぞれ7.4(95%CI 5.6-9.1)カ月、3.8(95%CI 3.7-5.4)カ月(層別HR 0.58、95%CI 0.45-0.75、p<0.001)という結果であった3,4)。EAUガイドラインおよび両試験の結果を踏まえると、本邦において二次治療以降で使用する薬剤はアキシチニブまたはカボザンチニブが選択肢になると考えられる。

実際に二次治療で使用されているTKIについて、近年実施された第Ⅲ相試験での使用例が示された。ペムブロリズマブ+アキシチニブ後の二次治療はカボザンチニブが7.6%と最も多く5)、アベルマブ+アキシチニブ後ではカボザンチニブ9.5%が最多6)、ニボルマブ+カボザンチニブ後ではアキシチニブ3.4%が最多7)であった。ペムブロリズマブ+レンバチニブ後は54.9%が二次治療に移行し、そのうち50.7%は血管新生阻害薬を使用していた8)。第Ⅲ相試験でも二次治療では、一次治療で使用していないTKI、または二次治療としてのエビデンスのあるTKIが多く使用されていたことが示された。

また、IO+IO、IO+TKI後の二次治療にIOをリチャレンジすることは避けるべきであることが、ケースレポート9)およびEAUガイドラインで示されている。現在、TKI以外の二次治療を検索するため、IO+TKI後のHIF-2α阻害薬Belzutifan*とエベロリムスとの比較(MK-6482-005試験)、同様にBelzutifan+レンバチニブとカボザンチニブの比較(MK-6482-011試験)、アテゾリズマブ**+カボザンチニブとカボザンチニブ単独の比較(CONTACT-03)などの臨床試験が進行している。

水野氏は、これらの結果次第では二次治療にアキシチニブ、カボザンチニブ以外の選択肢が増える可能性があると展望した。

* 本邦未承認
** 腎細胞がんは本邦適応外

1)European Association of Urology (EAU), Guidelines on Renal Cell Carcinoma, 2021
2)Bedke J, et al. Eur Urol. 2021; 79(3): 339-42.
3)Rini BI, et al. Lancet. 2011; 378(9807): 1931-9.
4)Choueiri TK, et al. N Engl J Med. 2015; 373(19): 1814-23.
5)Rini BI, et al. N Engl J Med. 2019; 380(12): 1116-27.
6)Motzer RJ, et al. N Engl J Med. 2019; 380(12): 1103-15.
7)Choueiri TK, et al. N Engl J Med. 2021; 384(9): 829-41.
8)Motzer R, et al. N Engl J Med. 2021; 384(14): 1289-300.
9)Martini DJ, et al. J Immunother Cancer. 2017; 5(1): 66.
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