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Genitourinary Cancer Today 2022 No.2
第109回日本泌尿器科学会総会:前立腺がん

LB02-04 リアルワールドにおける転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の相同組換え修復関連遺伝子変異保有率及び予後に関する国内多施設共同観察研究:ZENSHIN Study

上村 博司氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科)
更新日:2022年3月15日
日本人転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の相同組換え修復(HRR)関連15遺伝子変異陽性率は35.7%、BRCA1/2変異陽性率は13.3%と一定数存在すること、および、BRCA1/2変異陽性例は陰性例に比べてPSA無増悪生存期間(PSA-PFS)および全生存期間(OS)が短いことが示された。

本邦では2020年にPARP阻害薬であるオラパリブがBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに使用可能となったが、日本人mCRPC患者のHRR関連遺伝子変異保有率に関するエビデンスは限られており、HRR関連遺伝子変異と予後との関連も明らかではない。本研究では、日本人mCRPC患者の保存組織検体を用い、HRR関連遺伝子変異の保有率および予後との関連を検討するとともにリアルワールドでのmCRPCの治療パターンを確認した。

本研究は、2014年から2018年にmCRPCと診断された患者145例を対象にした多施設共同前向きコホート研究である。同意取得またはオプトアウト後、保存組織サンプルのHRR関連15遺伝子の変異解析を行い、その結果が得られた症例に関して、臨床データを2020年12月まで前向きに追跡した。主要評価項目は組織HRR関連遺伝子変異の保有率、副次評価項目はmCRPC診断後の治療パターンとした。

最大解析対象集団143例の年齢中央値は73.0(範囲 52.0-90.0)歳、ECOG-PS 0が91例(83.5%)、Gleasonスコア8以上が132例(95.0%)、転移部位は骨123例(86.0%)、肺18例(12.6%)、肝臓7例(4.9%)、mCRPC診断前直近の治療歴はADT単独24例(16.8%)、ADT+抗アンドロゲン薬107例(74.8%)、ADT+ドセタキセル1例(0.7%)、根治的治療は前立腺摘除術7例(4.9%)、放射線療法8例(5.6%)、がん家族歴なし104例(93.7%)であった。

HRR関連15遺伝子変異陽性率は35.7%(95%信頼区間[CI] 27.8-44.1)であり、欧米の変異保有率とほぼ合致していた1,2)。内訳は、CDK12が19例(13.3%)、BRCA1/2が19例(13.3%)、ATMが8例(5.6%)の順に多かった。BRCA1/2遺伝子変異陽性と陰性とでGleasonスコア、転移部位、家族歴などに明らかな差は認められなかった。
mCRPC診断後の治療は、一次治療は新規ホルモン治療薬が63例(44.4%)、タキサン系薬剤が32例(22.5%)、抗アンドロゲン薬が43例(30.3%)、二次治療はそれぞれ59例(51.8%)、39例(34.2%)、4例(3.5%)、三次治療は36例(42.4%)、39例(45.9%)、3例(3.5%)であり、一次治療、二次治療の組み合わせとしては、抗アンドロゲン薬-新規ホルモン治療薬が25例(17.6%)、新規ホルモン治療薬-新規ホルモン治療薬が22例(15.5%)、新規ホルモン治療薬-タキサン系薬剤が20例(14.1%)、新規ホルモン治療薬による一次治療のみが14例(9.9%)、タキサン系薬剤-新規ホルモン治療薬が12例(8.5%)であった。
全体のPSA-PFS中央値は5.6(95%CI 4.7-6.8)カ月、OS中央値は26.1(95%CI 22.1-30.5)カ月であった。一次治療別では、PSA-PFS中央値は新規ホルモン治療薬が6.5(95%CI 4.1-9.2)カ月、タキサン系薬剤が6.8(95%CI 5.1-8.8)カ月、抗アンドロゲン薬が3.3(95%CI 2.4-5.6)カ月、OS中央値はそれぞれ29.2(95%CI 19.7-32.9)カ月、23.0(95%CI 16.1-27.3)カ月、29.9(95%CI 22.8-NE)カ月であった。
HRR関連15遺伝子変異別では、陽性群、陰性/VUS*群それぞれのPSA-PFS中央値は5.1(95%CI 2.8-6.0)カ月、5.9(95%CI 5.0-9.2)カ月、OS中央値は21.1(95%CI 18.5-28.4)カ月、29.6(95%CI 23.0-NE)カ月であり、いずれも陽性の方が短い結果であった。

上村氏は、HRR関連遺伝子変異陽性例に対する既存治療の成績は限定的であり、早期の遺伝子変異検索および分子標的療法導入などの治療選択肢の拡大が必要であると考察した。

* variant of unknown significance:意義不明の変異

1)Kwon DH, et al. Cancer. 2021; 127(12): 1965-73.
2)Reimers MA, et al. Eur Urol. 2020; 77(3): 333-41.