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Genitourinary Cancer Today 2022 No.3
ASCO-GU 2022:膀胱がん

#440 高悪性度の上部尿路上皮がん患者の術前化学療法として、ゲムシタビン+シスプラチンを検討した多施設前向き第Ⅱ相臨床試験の最終結果

Final Results of a Multicenter Prospective Phase II Clinical Trial of Gemcitabine and Cisplatin as Neoadjuvant Chemotherapy in Patients with High-Grade Upper Tract Urothelial Carcinoma
Wesley Yip氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, USA)
更新日:2022年4月20日
高悪性度の上部尿路上皮がん(UTUC)患者に対するゲムシタビン+シスプラチンの術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)は有効であることが、多施設前向き第Ⅱ相試験の結果から明らかとなった。病理学的奏効率(<ypT2N0と定義)は63%を達成し、病理学的完全奏効(pCR)は19%であった。忍容性も良好で手術の遅延や周術期の転帰への影響は最小限であったことから、高悪性度UTUCに対する標準治療の選択肢となる可能性が示唆された。

UTUCは比較的稀な疾患で、予後不良とされる。POUT試験の結果により術後補助化学療法がUTUCに有効であることが明らかとなったが1)、腎尿管摘除術後は単腎となるためシスプラチン適応患者の割合は大きく低下する2-4)。そこで本試験ではNACとしてのゲムシタビン+シスプラチンの有効性を検討した。

主な適格基準は、高リスクのUTUC(組織学的に高悪性度を確認、および/または画像診断でcT2-T4aかつカテーテル細胞診陽性)、非転移性、糸球体濾過量推測値(eGFR)≧55 mL/分、KPS≧70%などであった。NACのレジメンは、ゲムシタビン(1,000 mg/m2をday1とday8に投与)とシスプラチン(35 mg/m2をday1とday8に投与)を1サイクル21日として4サイクル行
い、その後12週間以内に根治的腎尿管摘除術を施行した。

主要評価項目は病理学的奏効率であった。Simonの2段階デザインを採用し、病理学的奏効率が60%を超えた場合を有効とみなし、40%未満の場合は無効と判断することとした。副次評価項目はpCR、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性および忍容性だった。
試験結果である。58例が登録、そのうち全例でNACが行われ、57例で手術が施行された。被験者の年齢中央値は66歳、白人が95%、現喫煙者19%、元喫煙者44%、KPSは90%、eGFRは67 mL/分、高悪性度が93%だった。

被験者の89%がNACを3サイクル以上遂行(0サイクル5%、1サイクル4%、2サイクル2%、3サイクル42%、4サイクル47%)、投与遅延が9%、用量減量が21%、早期中止が14%だった。手術までの期間中央値は7週間(IQR: 5.0-8.1週)だった。グレード3以上の毒性は、リンパ球減少症(33%)、好中球減少症(32%)、高血糖症(14%)、血小板減少症(7%)、低カルシウム血症(7%)、発熱性好中球減少症(7%)だった。

病理学的奏効率は63%(36例)で、主要評価項目を達成した。pCRは19%、pTaが18%、pTisが12%、pT1が14%だった。ypT2Nany以上の非奏効例は37%であったが、手術前進行症例はなかった。

生存の観察期間中央値は3.1年で、2年PFSは78%、5年PFSは65%、2年OSは93%、5年OSは79%であった。病理学的奏効率により被験者を3つのグループ(ypT0、ypTa/Tis/T1、≧ypT2N0)に分類して解析した結果、ypT2N0未満の患者はypT2N0以上の患者と比べ、PFSとOSの両方で有意に延長した(いずれもp<0.001)。


1)Birtle A, et al. Lancet. 2020 ; 395(10232): 1268-77. 
2)Lane BR, et al. Cancer. 2010; 116(12): 2967-73. 
3)Xylinas E, et al. BJU Int. 2013; 112(4): 453-61. 
4)Raman JD, et al. Urol Oncol. 2014; 32(1): 47.e9-14. 
アンカー 1
監修 湯浅 健先生のコメント
UTUCでは、根治的腎尿管全摘後は単腎となり、シスプラチンunfitになる可能性が高くなる。今回はNACの高い完遂率および奏効率が報告された。最近、NAC非奏効例を中心に、ニボルマブ術後補助療法が承認されたことも合わせて、ハイリスクUTUCに対するNAC-GC療法は標準治療として重要な選択肢であることは納得できる。
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