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Genitourinary Cancer Today 2022 No.3
ASCO-GU 2022:膀胱がん

#531 進行性尿路上皮がんにおけるエンホルツマブ ベドチンへの反応性を予測するバイオマーカー

Biomarkers predictive of response to enfortumab vedotin (EV) treatment in advanced urothelial cancer (aUC)
Tanya Jindal氏(University of California, USA)
更新日:2022年4月20日
エンホルツマブ ベドチン(EV)の治療を受ける進行性尿路上皮がん(aUC)患者において、治療の反応性を予測するバイオマーカーを後ろ向き研究で検討した結果、TP53変異は無増悪生存期間(PFS)の延長と関連し、CDKN2AとCDKN2Bの変異はPFSの短縮と関連していることが明らかとなり、これらの変異がバイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。
   
EVが奏効する患者の予測バイオマーカーは、未だ確立されていない。本研究では、単一施設でEVの治療を受けたaUC患者32例について、EVの奏効例と非奏効例に分類して予測バイオマーカーの同定を試みた。奏効例は、治療後の初回の画像診断で完全奏効を達成したか、6カ月以上治療を継続した患者と定義し、それ以外の患者は非奏効例とした。これら2つのグループの分子特性と臨床的特徴についてカイ二乗検定を用いて比較した。次世代シークエンシング(NGS)のデータがある28例については、遺伝子変異(TERTp、TP53、CDKN2A、CDKN2B)の有無に基づいて分類し、2群間で全生存期間(OS)とPFSをログランク検定で比較した。
   
奏効例は19例、非奏効例は13例であった。奏効例と比べて非奏効例は、骨転移を有する患者が多く(21% vs 69%、p<0.01)、EVを併用療法で投与された患者が少なかった(58% vs 8%、p<0.01)。それ以外の因子では2群間で差は認められなかった。年齢中央値は奏効例68歳、非奏効例71歳、原発巣の部位は膀胱が最も多くそれぞれ63%、85%、内臓転移ありはそれぞれ68%、85%、肝転移ありはそれぞれ16%、38%だった。
   
NGSを用いた解析では、奏効例が非奏効例よりTP53変異が多い傾向にあり(71% vs 36%、p=0.07)、CDKN2B変異は非奏効例の方が多い傾向があった(24% vs 55%、p=0.09)。TERTpとCDKN2Aの発現は2群間で差は認められなかった(TERTp:65% vs 73%、p=0.65、CDKN2A:29% vs 55%、p=0.18)。
   
遺伝子変異の有無によるOSとPFSの解析では、TP53とCDKN2A、CDKN2Bの変異が転帰と関連していた。TP53変異を有する症例は変異がない症例と比べて、OSが延長する傾向にあり、PFSは有意に延長していた(OS中央値:変異例 未到達 vs 非変異例17.03カ月、p=0.056、PFS中央値:未到達 vs 6.55カ月、p=0.04)。一方、CDKN2A変異を有する症例とCDKN2B変異を有する症例は、それぞれ変異がない症例と比べて、PFSが有意に短かった(PFS中央値:CDKN2A変異例4.38カ月 vs 非変異例 未到達、p=0.047、CDKN2B変異例4.26カ月 vs 非変異例 未到達、p=0.023)。TERTpについては、変異の有無によってOS、PFSに差を認めなかった。
アンカー 1
監修 湯浅 健先生のコメント
EV はmUCの標準治療薬となった新規ADCである。今回EV治療のバイオマーカー候補として報告されたがん抑制遺伝子P53は、尿路上皮がんにおいて最もよく認められる遺伝子変異の一つで、がん化、増殖、進行に強く関連しているとされる。一方で、P53遺伝子野生型は、シスプラチン抗がん剤治療耐性に関連し、P53遺伝子変異型の方が抗がん剤治療感受性があると従来より言われてきた。新規ICIおよび新規ADC時代になって、「またここでもP53か」と再確認した。
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