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Genitourinary Cancer Today 2022 No.3
ASCO-GU 2022:膀胱がん

集学的治療による膀胱温存療法:新規治療薬の時代における毒性と機能的転帰

Bladder-Sparing Trimodality Therapy: Toxicity and Functional Outcomes in the Era of Novel Therapeutics
Sophia C. Kamran氏(Massachusetts General Hospital, USA)
更新日:2022年4月20日
筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に対する標準治療は根治的膀胱全摘術(RC)であるが、集学的治療による膀胱温存療法(TMT)は、治療選択肢の一つとされている。本発表では毒性や機能的転帰に関するこれまでの知見を振り返るとともに、新規治療薬の時代におけるTMTの可能性について、主に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との併用や放射線寡分割照射および、そのICIとの併用、適応放射線療法などに注目し議論を展開した。
   
TMTとRCを直接比較した試験は報告されていないが、放射線療法腫瘍学グループ(RTOG)の統合解析1)やMassachusetts General Hospitalの治療経験2)から、TMT施行例の疾患特異的生存期間(DSS)は、RCと同等であることが報告されている。遅発性の毒性についても、RTOGの解析では、化学放射線療法から180日以上経過した後のグレード3以上の骨盤毒性は7%と比較的低いと報告された3)。また機能的転帰に関しては、健康関連QOLをTMT施行例とRC施行例で比較検討した結果、TMTは、性機能や身体イメージの向上、情報に基づく意思決定スコアの向上、およびがんの悪影響に対する懸念の低下などと関連していた4)。これらの他にも、照射量や分割、照射野、化学療法増感剤使用の是非をはじめ多くの解決すべき余地はあるものの、総じて適切に選択されたMIBC患者においてTMTは有効な治療選択肢と考えられる。
   
TMTによる転帰をさらに高める戦略として、ICIとの併用が検討されている。放射線療法(RT)は、ICIが標的とする腫瘍関連抗原の発現を促すとともに、多くのタンパク質の放出上昇を誘導する可能性があるため、RTとICIの併用により、相乗的な転帰向上が期待されている。切除不能の膀胱がん患者6例において、RTとデュルバルマブ*の同時併用を施行した後デュルバルマブ単独投与を行う第Ⅰb試験が報告されており、用量制限毒性(DLT)は認められなかったため5)、継続してN1~2のMIBC患者を対象にデュルバルマブ+化学放射線療法を検討する第Ⅱ相無作為化試験(ECOG-ACRIN/NRG 8185)が進行中である。また第Ⅲ相無作為化試験SWOG/NRG 1806は、局所MIBC患者を対象に化学放射線療法単独と化学放射線療法+アテゾリズマブ*の併用療法を比較検討しており、73例における安全性データがASCO GU 2021で報告された6)。グレード3以上の毒性は化学放射線療法単独が36例中11例、アテゾリズマブ併用群は37例中23例に発現し、免疫関連の毒性はなく、多くが血液学的毒性であった。目標症例数は475例で、現在240例以上が組み入れられている。
   
一方、膀胱がんへの超寡分割照射は主にイギリスで施行され注目を集めているが、寡分割照射とICIの併用には注意が必要である。第Ⅰ相PLUMMB試験では、局所進行性または転移性の膀胱がん患者5例に対し超寡分割照射(週6Gy×6、全36 Gy)とペムブロリズマブの併用を行ったが、治療関連のDLTイベントが2例に発現し(重度の膀胱刺激症状)、試験は中断された7)。また、局所MIBC患者を対象にアテゾリズマブ+ゲムシタビンと寡分割照射(50Gy/20分割)の同時併用を検討した第Ⅰ相試験では、アテゾリズマブの用量が1,200 mgだった最初の5例のうち2例にDLTが発現したため、その後登録された3例では840mgに減量したが、なおも2例にDLTが発現したことから試験は中止された。毒性は主に消化管関連であった8)。このように十分な注意が必要であるものの、寡分割照射とICIの併用は複数の試験で現在検討中である。
   
また、こうした毒性を軽減する方法として、adaptive image-guided radiation therapy (ART)の可能性が検討されている。ARTでは、腸や膀胱、その他の解剖学的構造の変化による腫瘍の変化を考慮して、RTの治療計画を最適化する。そのため腫瘍や高リスク部位に対し、より安全に照射量を増加できる可能性がある。この治療アプローチを実証するため、現在MIBC患者240例を対象としたRAIDER試験が施行中である。さらにMIBC患者において、治療への反応性や毒性などと関連するバイオマーカーの解明が不可欠であり、次世代シークエンシングを用いた遺伝子解析と組み合わせた個別化したRTへの取り組みが検討されている。

1)Mak RH, et al. J Clin Oncol. 2014; 32(34): 3801-9.
2)Giacalone NJ, et al. Eur Urol. 2017; 71(6): 952-60.
3)Efstathiou JA, et al. J Clin Oncol. 2009; 27(25): 4055-61.
4)Mak KS, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2016; 96(5): 1028-36.
5)Joshi M, et al. ASCO GU 2018 #455
6)Singh P, et al. ASCO GU 2021 #428
7)Tree AC, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2018; 101(5): 1168-71.
8)Marcq G, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021; 110(3): 738-41.
 
監修 湯浅 健先生のコメント
本演題は、TUR-BT、放射線治療、抗がん剤治療、および新規薬物療法を組み合わせた膀胱温存療法の取り組みである。現在、免疫チェックポイント阻害剤の併用、および超寡分割照射や、adaptive image-guided radiation therapy (ART)が試みられ、現在複数の臨床試験が行われている。浸潤性膀胱がんに対する標準治療は現在も根治的膀胱全摘術であるが、将来的には、NGSによる遺伝子変異などの詳細な解析をもとにした、症例個々に応じて最適な治療法を選択するテーラーメイドな治療が、浸潤性膀胱がん治療の目標の一つになると思われる。