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Genitourinary Cancer Today 2022 No.1
APCCC 2021

セッション3:PARP阻害薬とさらにその先:組織と血液の分子学的特徴

Session 3: PARP inhibitors and beyond: Molecular characterisation of tissue and blood

進行性前立腺がんの予測医療におけるリキッドバイオプシー  vs. 腫瘍組織生検

Liquid vs. solid tumor biopsy for predictive medicine in advanced prostate cancer
Andrew J Armstrong氏(Duke Cancer Institute Center for Prostate and Urologic Cancers, USA)
更新日:2022年2月4日
転移性前立腺がんにおける遺伝子検査は様々なガイドラインで推奨されている。例えばNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン(version 2, 2021)では、高リスクの転移性前立腺がんに対し生殖細胞系列遺伝子検査が推奨されることになった。体細胞遺伝子検査は、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者におけるPARP阻害薬とペムブロリズマブのコンパニオン診断として推奨されている。

組織生検は、豊富な腫瘍組織や大規模な遺伝子パネルが利用できる点などが長所である。一方、組織採取が侵襲的で繰り返し行うことが困難であり、また腫瘍の部位や時間経過による不均一性が反映されない可能性や、古い検体やコア針生検には十分な腫瘍内容物が含まれない可能性がある。リキッドバイオプシーは、非侵襲的で簡便、繰り返し採取が可能であり、組織検体の検査結果との一致率が高い。しかし、細胞死によりDNAが断片化することがあり、また検査精度は腫瘍量や進行度、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)濃度に依存するところがある。現在使用されるctDNAベースのリキッドバイオプシーは、広範囲なゲノム構造の変化を捉えられないリスクが高いほか、RNA発現やスプライシング、PSMAタンパク発現、ネオエピトープ、ネオアンチゲンなどの表現型の特徴を見逃すリスクがある。

前立腺がんにおいて、相同組換え修復(HRR)遺伝子で最も高頻度な変異はBRCA2で、mCRPC患者を対象としたPROfound試験1)では、8.7%にBRCA2の変異が見つかった。大多数の被験者(72.1%)には、生殖細胞系列と体細胞のいずれにおいてもHRR遺伝子変異は検出されなかった。生殖細胞系列でのBRCA2変異の発現率は3.5~5.3%と報告されている2,3)。BRCA1、BRCA2、およびATMの腫瘍組織とctDNA間の一致率は高く、陰性一致率がそれぞれ99%、98.2%、94.9%とのデータがある。陽性一致率はより低くそれぞれ66.7%、82.1%、75.4%だった4)。DNA修復経路遺伝子の変異は原発巣より転移巣に高発現(10% vs. 27%)しており、このことは、HRR遺伝子変異を伴うがんは、より悪性度が高い可能性を示唆している5)

相同組換え修復欠損(HRD)の評価では、ctDNAと組織検体(原発巣および転移巣)との一致率はおおよそ50~100%(平均84%)だが、不一致のうち17%はクローン性造血(CHIP)が原因とされる6)。HRDは原発巣にのみ発現することから、ほとんどのHRDは腫瘍発生初期に生じていることが示唆される。よって検体は原発巣組織が有用と考えられる。またctDNAと組織検体の一致率は技術的な要素も関連しており、ctDNA断片濃度が>35%であると高くなり、不一致はctDNA断片の低濃度や限定されたゲノムの範囲によりしばしば引き起こされる。または、あるctDNA(AR、TP53、APC、RB1、PTEN変異)特有 に検出される腫瘍の進化の違いが一因の可能性もある7)

組織生検でBRCA1/2遺伝子またはATM遺伝子の変異を同定したmCRPC患者245例を対象に、PARP阻害薬であるオラパリブとエンザルタミドまたはアパルタミドを比較検討したPROfound試験では、被験者のうち111例のサブグループには血漿ctDNA検査も施行し、主要評価項目の画像評価による無増悪生存期間(rPFS)と副次評価項目の全生存期間(OS)について、全患者とサブグループで違いがあるかを検討した。その結果、rPFSのオラパリブのハザード比(HR)は全患者では0.34、サブグループでは0.33と同等で、OSについても0.69と0.58と一致しており、組織生検とリキッドバイオプシーのどちらを施行しても同等の結果が得られることが示された8)

ミスマッチ修復欠損(MMRD)は前立腺がん患者の3~6%に検出され9)、これらの患者ではペムブロリズマブの奏効が期待される。マイクロサテライト不安定性(MSI)に対するctDNA検査の感度は様々なアッセイで確立されており、腫瘍内容物が>0.1%であれば高い検査精度を見込むことができる。

血中循環腫瘍細胞(CTC)におけるAR-V7陽性は、AR阻害薬への抵抗性との関連性がPROPHECY試験で確認されている。AR-V7陽性のCRPC患者はAR阻害薬投与下のPFSとOSが有意に短く、一方でドセタキセルまたはカバジタキセルの奏効には影響しないことも明らかとなった10,11)。以上の点から、CTCのAR-V7検出は治療選択において有用である可能性が示唆された。

AR-V7陰性のmCRPCでは様々な分子学的変化が交差耐性と関連している。悪性度の高い患者においてAR陰性の割合が増えており(36%)12)、AR標的薬の使用増加による影響が懸念される。神経内分泌(NE)変化が大きく関連しており、CTCでNE陽性が検出された患者はNE陰性の患者と比べてPFS、OS、および奏効率が不良であり、CTCでのNE表現型が予後予測因子である可能性が示唆された。

ctDNA検査の課題はCHIPによる干渉と交絡、腫瘍量やctDNA断片が少ないことにより、評価不能な場合があること、経時的な疾患の変化などが挙げられる。CHIPは血液中や骨髄に現れるが悪性腫瘍との関連性はない。加齢や喫煙、男性などで発現率が高いためmCRPCの高齢患者での割合が高い。死亡や血液がん、心血管疾患のリスクの上昇との関連も認められている13,14)。進行性前立腺がん患者のCHIPバリアント率は19%で、検出された体細胞DNA修復遺伝子変異の50%以上でCHIPが認められた15)。このことからArmstrong氏は白血球を用いて検証するか、orthogonal methodによる腫瘍の遺伝子検査をすることが有用かもしれないと考察した。

Armstrong氏はまとめとして、転移性前立腺がんにおいて組織生検とリキッドバイオプシーは両方とも、転帰と関連のある遺伝子変異の検出において価値ある検査方法であると述べた。可能であれば、腫瘍内容物やゲノム範囲での利点があるため転移巣の組織生検の実施が望ましい。一方リキッドバイオプシーは、腫瘍組織が採取できない場合や生物学的な差異が疑われる場合に望ましいとまとめた。


1) De Bono JS J, et al. Ann Oncol. 2019; 30(suppl5): V328-9.
2) Pritchard CC, et al. N Engl J Med. 2016; 375(5): 443-53.
3) Na R, et al. Eur Urol. 2017; 71(5): 740-7.
4) Chi K, et al. J Clin Oncol. 2021; 39(suppl6): 26.
5) Armenia J, et al. Nat Genet. 2018; 50(5): 645-51.
6) Schweizer MT, et al. JAMA Oncol. 2021; 7(9): 1-5.
7) Gupta S, et al. Mol Cancer Res. 2021; 19(6): 1040-50.
8) Matsubara N, et al. J Clin Oncol. 2021; 39(suppl6): 27.
9) Le DT, et al. Science. 2017; 357(6349): 409-13.
10) Armstrong AJ, et al. J Clin Oncol. 2019; 37(13): 1120-9.
11) Armstrong AJ, et al. JCO Precis Oncol. 2020; 4: PO.20.00200.
12) Bluemn EG, et al. Cancer Cell. 2017; 32(4): 474-89.e6.
13) Jaiswal S, et al. N Engl J Med. 2014; 371(26): 2488-98.
14) Zekavat SM, et al. Nat Med. 2021; 27(6): 1012-24.
15) Jensen K, et al. JAMA Oncol. 2021; 7(1): 107-10.