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Genitourinary Cancer Today 2022 No.1
APCCC 2021

セッション1:新規診断の転移性ホルモン感受性前立腺がんにおける疾患管理

Session 1: Management of newly diagnosed metastatic hormone-sensitive prostate cancer

サブグループによって必要な治療法は異なるか?

Do different subgroup of patients need different treatments? 
Christopher Sweeney氏(Dana-Farber Cancer Institute, USA)
更新日:2022年2月4日
Sweeney氏は、実臨床で転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC) 患者において個別化治療を行うには、「患者」、「がんの特徴」、「生物学的特徴」の3つの要素を考慮すべきであるとし、今回の発表では、がんの特徴によって分類した各サブグループとその治療成績についてエビデンスをレビューした。

がんの特徴では①予後、②転移が同時性(synchronous: がん発見時に転移を有する)か異時性(metachronous: がん発見時は限局性で局所治療後に転移をきたす)か、③転移の広がりの3点を考慮すべきである。

mCSPC 患者におけるpoor risk(予後不良)の定義は、過去の4試験(SWOG、MD Anderson Cancer Center、CHAARTED、LATITUDE)を振り返るとわずかに違いがあるものの、予後不良の患者は予後良好の患者と比べて全生存期間(OS)が明らかに短く、どの試験の定義でも層別化可能であることが示されている1-4)。その上でSweeney氏は、コンセンサスとして、予後不良の定義を「部位にかかわらず4カ所以上の骨転移および/または肝転移を有する」と単純化できないだろうかと提案した。

転移が同時性か異時性か、また腫瘍量がhigh volumeかlow volumeかという分類でも予後に差が現れる。CHAARTED試験とGETUG-15試験の解析では、同時性でかつhigh volume*の患者はOS中央値が3年以下と最も短く、異時性かつlow volumeの患者が8年以下と最も長かった5)。米国の病院データベースを用いた解析においても同様の結果が報告されている6)

これらのサブグループではアンドロゲン除去療法(ADT)とドセタキセル(DOC)の併用による治療効果が異なる。GETUG15試験、CHAARTED試験およびSTAMPEDE試験(DOC群)のOSハザード比(HR)を見ると、M1の患者全体ではそれぞれ0.88、0.72、0.81だったのに対し、high volumeの患者(同時性/異時性)ではそれぞれ0.78、0.63、0.81で、DOC追加によるOS延長効果がより大きく、一貫していることが分かる。一方、同時性かつlow volumeの患者ではOS延長効果は小さく、また試験によってばらつきがあり、異時性かつlow volumeの患者ではOS延長効果はなかった5,7-9)。しかし、low volumeの患者では、局所放射線療法(RT)の追加によりOS延長効果が得られる可能性がある。HORRAD試験とSTAMPEDE試験の統合解析では、骨転移が5カ所未満のlow volumeの患者において、局所RTの追加でOSが有意に延長していた(HR 0.73、95%CI: 0.58 – 0.92、p=0.0071)10)

一方、新規AR標的薬(アビラテロン[ABI]、エンザルタミド[ENZ]、アパルタミド[APA])のADTへの追加によるOS延長効果は、サブグループ間で同等である。LATITUDE試験(ABI)、STAMPEDE試験(ABI)、ENZAMET試験(ENZ)、TITAN試験(APA)、およびARCHES試験(ENZ)におけるOSのHRは、M1患者の全体でそれぞれ0.66、0.60、0.67、0.65、0.66と良好な延長効果が認められ、high volumeの患者ではそれぞれ0.62、0.54、0.53、0.70、0.66、low volumeの患者でもそれぞれ0.72、0.55、0.39、0.52、0.66と強固かつ一貫した有効性が示された。またENZAMET試験とTITAN試験では、異時性のM1患者において初めて、ENZまたはAPAの追加によって有意なOS延長効果が認められた(ENZAMET試験:HR 0.56、TITAN試験:HR 0.39)11-17)

さらに、現在トリプレット療法(ADT±新規AR標的薬+DOC)を検討する第Ⅲ相臨床試験のPEACE-1が進行中である。被験者の60%がDOCを同時施行しており、high volumeの患者においてADT+ABI+DOCの顕著なOS延長効果が認められた(HR 0.72)18)。Low volumeの患者はイベント数が未達のため、現時点でのOS延長効果は不明確であるが、同時性かつlow volumeの患者の5年OSはダブレット療法およびトリプレット療法ともに約70%で、有望なデータであるとSweeney氏は評価した。

またSweeney氏は、肝転移を有する患者の治療は分けて考える必要があると指摘した。内臓転移例においてCHAARTED試験ではDOC追加の明確なOS延長効果が示されたが3)、新規AR標的薬の追加を検討した試験(LATITUDE試験、TITAN試験、ARCHES試験)ではOS延長効果は不明確であった19。TITAN試験とARCHES試験の内臓転移例には、予後不良とされる肝臓転移例と比較的予後良好な肺転移例が混在しており、転移部位による詳細な解析が必要だが、これらの患者ではホルモン療法が最適な一次治療ではない可能性が懸念されると述べた。

最後にサブグループごとの治療オプションをまとめた。予後良好(異時性、骨転移3カ所以下)の患者は新規AR標的薬を主な治療計画とし、体幹部定位放射線療法(SBRT)の追加を検討、異時性の中等度(骨転移4カ所以上)の患者はDOCまたは新規AR標的薬を基本とし、トリプレット療法を考慮するとした。同時性の中等度(骨転移3カ所以下)の患者では局所RTまたは新規AR標的薬を基本とし、局所RT+新規AR標的薬+SBRT(SBRT不適格の場合はADT+DOC+ABI)を検討、予後不良(同時性、骨転移4カ所以上および/または内臓転移)の患者はADT+ABI+DOC(化学療法適格の場合)のトリプレット療法またはAR標的薬が主たる治療計画であろうとした。

*high volume:内臓転移および/または4つ以上の骨転移(うち1つ以上が骨盤もしくは脊椎外)(CHAARTED試験の定義)


1) Eisenberger MA, et al. N Engl J Med. 1998; 339(15): 1036-42.
2) Millikan RE, et al. J Clin Oncol. 2008; 26(36): 5936-42.
3) Sweeney CJ, et al. N Engl J Med. 2015; 373(8): 737-46.
4) Fizazi K, et al. Lancet Oncol. 2019; 20(5): 686-700.
5) Gravis G, et al. Eur Urol. 2018; 73(6): 847-5.
6) Francini E, et al. Prostate. 2018; 78(12): 889-95.
7) Gravis G, et al. Eur Urol. 2016; 70(2): 256-62.
8) Kyriakopoulos, et al. J Clin Oncol. 2018; 36(11): 1080-7.
9) Clarke NW, et al. Ann Oncol. 2019; 30(12): 1992-2003.
10) Burdett S, et al. Eur Urol. 2019; 76(1): 115-24.
11) Fizazi K, et al. J Clin Oncol. 2019; 37(suppl7): 141.
12) Hoyle AP, et al. Eur Urol. 2019; 76(6): 719-28.
13) James N, et al. Ann Oncol. 2020; 31(suppl4): S509.
14) Davis ID, et al. N Engl J Med. 2019; 381(2): 121-31.
15) Chi KN, et al. N Engl J Med. 2019; 381(1): 13-24.
16) Chi KN, et al. et al. J Clin Oncol. 2021; 39(suppl6): 11.
17) Sweeney CJ, et al. Eur Urol. 2021; 80(3): 275-9.
18) Fizazi K, et al. Ann Oncol. 2021; 32(suppl5): S1299.
19) Baciarello G, et al. Ann Oncol. 2020; 31(suppl4): S530-1.
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