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Genitourinary Cancer Today 2022 No.1
APCCC 2021

セッション1:新規診断の転移性ホルモン感受性前立腺がんにおける疾患管理

Session 1: Management of newly diagnosed metastatic hormone-sensitive prostate cancer

転移性去勢感受性前立腺がんにおける強化全身療法+放射線療法の根拠と既存データ

Rationale and available data for intensified systemic treatment plus radiotherapy in mCSPC
Karim Fizazi氏(Institut Gustave Roussy, France)
更新日:2022年2月4日
転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)に対しアンドロゲン除去療法(ADT)に追加的な全身療法と原発巣への放射線療法(RT)を併用するトリプレット療法について、これまでのエビデンスをFizazi氏 が総括した。

同氏はまず、mCSPC患者においてADTに全身療法を追加することによる生存延長効果に関するデータを振り返った。ドセタキセル(DOC)の追加によるベネフィットは、CHAARTED試験、GETUG-15試験およびSTAMPEDE 試験(標準治療±DOC、および標準治療+ゾレドロン酸±DOC)の計2,993例(うち死亡は1,254例)のデータを基にしたメタ解析で検討されており、標準治療+DOCの標準治療単独に対する全生存期間(OS)のハザード比(HR)は0.77(95%CI: 0.68 – 0.87、p<0.0001)であったことが示されている1)。また標準治療にアビラテロン(ABI)を追加した場合のOS延長効果はLATITUDE試験(HR 0.62、95% CI: 0.51 – 0.76、p<0.001)2)とSTAMPEDE試験(HR 0.63、95% CI: 0.52 – 0.76、p<0.001)3)で報告されている。

一方、標準治療+局所RTの併用によるOS延長効果は、STAMPEDE試験において、転移腫瘍量の少ない患者で認められたが(HR 0.68、95% CI: 0.52 – 0.90、p=0.007)、転移腫瘍量の多い患者では認められなかった(HR 1.07、95% CI: 0.90 – 1.28、p=0.420)4)

以上の試験は、全身療法の強化、または放射線療法の追加を個別に検証しただけであるため、これらの治療法を組み合わせた場合の有効性および安全性はいまだ明確ではない。

トリプレット療法の有効性はPEACE-1試験により明らかになりつつある。新規診断のmCSPC 患者1,173例を、ADT±DOC(SOC)群、SOC+ABI群、SOC+RT群、SOC+ABI+RT群の4群に1:1:1:1で無作為化し、ADT+DOCへのABI追加の有効性と、オリゴM1患者におけるRT追加の有効性を2×2のファクトリアルデザインで検討している。最新データからは、ADT+DOCにABIを追加することで、画像評価による無増悪生存期間(rPFS)とOSのどちらも有意に延長することが示された。その有効性は特にhigh volumeの患者で顕著であり、ABI追加によるrPFSのHRは0.47(95% CI: 0.36 – 0.60、p<0.0001)、OSのHRは0.72(95% CI: 0.55 – 0.95、p=0.019)であった。またABI追加による毒性の発現率の上昇は示されなかった5)。同氏は以上のデータなどから、M1CSPC患者において ADTに第二世代ホルモン療法薬(ABI、アパルタミド、ダロルタミド、エンザルタミド)+DOCを加えるトリプレット療法の是非は解明されつつあるのではないかと考察した。

一方、ADT+全身療法に局所RTを追加するトリプレット療法に関しては、無作為化試験のデータがまだない。前述のPEACE-1試験ではオリゴM1患者502例における局所RTの追加の有効性も検討しているが、現時点では必要イベント数に達しておらずデータは未成熟である。2023年までに必要イベント数に達すると予想される。

参考データとして、ABI+局所RTを検討した第Ⅰ相GETUG/GEP試験の結果も紹介された。局所サルベージRTを施行する1カ月前からABI 1,000mg/dayを投与しはじめ、RTと同じタイミングでLH-RHアゴニスト製剤の6カ月間の投与を開始する方法と、ABI投与開始と同時すなわちRT開始1カ月前にLH-RHアゴニスト製剤の投与を始める方法の、2つを検討した。その結果、LH-RHアゴニスト製剤とABIの同時併用は、ABI投与開始から1カ月後にLH-RHアゴニスト製剤を開始した場合と比べ、テストステロン値の低下が大きかった。安全性については、併用による骨盤内の毒性増加はなかったが、肝毒性の発現率が上昇した6)

またDOCに局所RTを上乗せすることを検討した試験の多くは、DOCとRTの同時施行ではなく、DOCをRTの前または後に投与する順次投与である。例えばPEACE-1試験のRT追加群の約半数はDOC先行投与、STAMPEDE試験ではRTを施行した患者の18%でDOCが投与されたが、順次投与だった。唯一、同時施行を検討した第Ⅱ相試験からは、同時施行による安全性シグナルは示されていない7)

Fizazi氏は、M1CSPC患者に対するADTに上乗せする併用療法は、転移巣へのRTやPARP阻害薬やLu-PSMA*などの新規治療薬に関する試験も進められており、今後はより複雑化すると考えられ、これらをどのように組み込んでいくかが課題であるとした。

以上より同氏は結論として、既存のデータはM1CSPC患者に対する複数の全身療法の併用(ADT+DOC+ABI)を支持するとした。一方、転移腫瘍量の少ないオリゴM1患者においては、強化全身療法への局所RTの追加は理にかなっているが、無作為化比較試験による直接的なエビデンスはなく、PEACE-1試験のRTに関する解析で明らかになるであろうと述べた。

*本邦未承認

1) Vale CL, et al. Lancet Oncol. 2016; 17(2): 243-56.
2) Fizazi K, et al. N Engl J Med. 2017; 377(4): 352-60.
3) James ND, et al. N Engl J Med. 2017; 377(4): 338-51.
4) Parker CC, et al. Lancet. 2018; 392(10162): 2353-66.
5) Fizazi K, et al. Ann Oncol. 2021; 32(suppl5): S1299.
6) Supiot S, et al. Oncotarget. 2018; 9(31): 22147-57.
7) Bolla M, et al. Radiother Oncol. 2010; 97(2): 312-7.