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Genitourinary Cancer Today 2022 No.5
APCCC 2022

セッション6:転移性去勢抵抗性前立腺がんの疾患管理

Session6: Management of metastatic CRPC

転移性去勢抵抗性前立腺がんにおける最適な治療シークエンス

Optimal Treatment Sequencing in Metastatic Castration Resistant Prostate Cancer 
Maha Hussain氏(Northwestern University) 
更新日:2022年11月14日
前立腺がん治療は、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)、非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)および転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の疾患管理において目覚ましい進歩を遂げ、生存延長をもたらしているが、同時に治療シークエンスを考える上で複雑な判断が必要となっている。Hussain氏はmCRPCの治療シークエンスに関する試験データを振り返りながら、疾患段階のより早期に強力な治療が導入されることにより、mCRPCで使用する治療薬にどのような影響を及ぼすのかを理解する必要があると議論した。

新規診断のmCRPC患者において、エンザルタミド(ENZ)とアビラテロン(ABI)の至適投与順序について検討した第Ⅱ相無作為化試験では、ABIを先行し二次治療としてENZを投与した方が、逆の順序より転帰が良好であった1)。今後は生物学的根拠や、mHSPCでこれらのAR標的薬を使用している場合の、mCRPCにおけるAR標的薬の有効性への影響などを解明する必要がある。

また三次治療の選択については、ドセタキセル(DOC)の治療歴がありAR標的薬(ABIまたはENZ)の治療開始後12カ月以内に進行したmCRPC患者を対象に、カバジタキセル(CBZ)か、AR標的薬(ABI使用歴のある患者はENZ、ENZ使用歴のある患者はABI)への切り替えを比較したCARD試験で、CBZが主要評価項目である画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)、副次評価項目である全生存期間(OS)、およびPFSを有意に延長したことが報告されている2)。Hussain氏は適切に治療薬を選択していくことの重要性を改めて強調したが、非症候性や進行が穏やかな患者では、AR標的薬を選択することは必ずしも間違いではないと付け加えた。

次に、PROfound試験のデータからオラパリブへの反応性が遺伝子変異とタキサン系化学療法の治療歴によって異なるかを検討した事後解析を紹介した。BRCA1またはBRCA2に変異を有する患者は化学療法治療歴の有無を問わず、ABIまたはENZとの比較でオラパリブにOSベネフィットが認められた。一方、CDK12に変異のある患者では化学療法治療歴のないグループだけに、ATM変異のある患者では化学療法治療歴のあるグループだけにオラパリブのOS延長効果が認められた3)。本試験は治療シークエンスを検討する目的でデザインされたものではなく、これらのデータも事後解析によるものであるが治療シークエンスを考える上で有益な可能性がある。

現在mCRPCではPARP阻害薬とAR標的薬の相乗効果を狙った併用療法を検討する試験が複数進行中である。オラパリブとABIの併用をABI単独と比較した第Ⅲ相PROpel試験(バイオマーカーによる層別化なし)では併用療法がrPFSの有意な延長を示したが4)、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異の有無で被験者を層別化し、ニラパリブ*+ABI併用の有効性をABI単独と比較検討した第Ⅲ相MAGNITUDE試験では、変異を有する患者にのみ併用療法によるrPFS延長効果が認められた5)。Hussain氏はこれらの併用療法が実臨床で使用された場合、その先の治療選択にどのような影響を与えるか、新たな疑問が生じると指摘した。

mHSPCでは近年ADTにDOCまたはAR標的薬を追加する2剤併用の有効性が認められ、最近はPEACE-1試験(ADT+DOC+ABI)およびARASENS試験(ADT+DOC+ダロルタミド)において3剤併用のOSベネフィットも報告されている6,7)。がん治療における基本原則は、有効な治療を疾患のより早い段階で施行することであるが、これらの治療で進行した時にmCRPCで使用する治療薬の選択にどのような影響が出てくるかは明らかになっていない。mHSPCではAR標的薬とPARP阻害薬の併用を検討する試験も進行中である。

現段階でmCRPCにおいて延命効果が認められている薬剤の多くは、mHSPCやnmCRPCでも生存延長効果が示されている。mCRPCの治療選択では、mHSPC およびnmCRPCでの治療歴、全身状態、併存疾患、症状、治療コスト、ゲノミクス、患者の選択などを総合的に判断することが重要だろうと考察した。

*本邦適応外

1)Khalaf DJ, et al. Lancet Oncol. 2019; 20(12): 1730-9.
2)de Wit R, et al. N Engl J Med. 2019; 381(26): 2506-18.
3)Hussain M, et al. N Engl J Med. 2020; 383(24): 2345-57.
4)Saad F, et al. J Clin Oncol. 2022; 40(suppl 6): abstract 11.
5)Chi KN, et al. J Clin Oncol. 2022; 40(suppl 6): abstract 12.
6)Fizazi K, et al. Lancet. 2022; 399(10336): 1695-707.
7)Smith MR, et al. N Engl J Med. 2022; 386(12): 1132-42.
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