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Genitourinary Cancer Today 2021 No.4
2021 JSCO・JSUO:腎細胞がん
#O21-1 局所進行腎細胞癌における正常腎実質浸潤の意義:
画像および組織学的所見に基づく考察
田中 一氏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 腎泌尿器外科学教室)
更新日:2021年12月22日
局所進行腎細胞がん(RCC)において病理学的腎実質浸潤(RPI)は予後不良と関連し、その所見は術前CTにおいて腫瘍と腎実質境界の不明瞭または不整の有無に着目することによって予測可能であることが示された。
局所進行RCCの予後は多様であり、さらなる予後予測因子の同定がRCC治療戦略の構築に役立つものと考えられる。そこで、局所進行RCCにおいて正常腎実質浸潤を定義し、その意義について画像および病理学的所見に基づく検討が行われた。
2008~2018年に根治的腎摘除術または腎部分切除術が施行され、≧pT3aかつ遠隔転移を有さないRCC患者のうち、術前の薬物治療歴がなく、病理学的解析および術前ダイナミックCTの解析が可能であった65例が対象とされた。
はじめに、2名の病理医が腎腫瘍と正常腎実質境界に着目して切除検体を解析し、RPIの有無を検索した。RPIは腫瘍と正常腎実質境界において被膜様構造が欠損し、かつ正常腎組織を巻き込むように腫瘍が浸潤している、あるいは小胞巣が主病変から離れて腎実質内に存在する、のいずれかを呈するものと定義された。
さらに、2名の読影者が術前ダイナミックCTを解析し、RPIを疑う所見として腫瘍と正常腎実質の境界不明瞭の有無を検索した。明らかな境界不明瞭のなかった患者については、境界における凹凸の有無をもって「境界不整あり」または「境界整」に分類した。
エンドポイントは無再発生存率およびがん特異的生存率とし、病理学的RPIとエンドポイントとの関係、および画像上の腎腫瘍と腎実質境界の所見と病理学的RPIの関係について検討された。
対象患者の年齢中央値は70歳(四分位範囲:60-75歳)、男性が45例(69%)であり、腫瘍径中央値は6.0 cm(同:4.7-7.4 cm)、根治的腎摘除術施行例は61例(94%)、CRP中央値は0.09 mg/dL(同:0.04-0.29 mg/dL)であった。
病理学的所見では淡明細胞型が57例(88%)を占め、RPIは25例(39%)に認められた。RPIありの患者ではRPIなしに比べ、有意にCRPが高値であった(p=0.02)。また、RPIありでは≧pT3bは6例(24%)、≧Fuhrman grade 3は14例(70%)であり、いずれもRPIなしに比べ有意に多かった(それぞれp=0.02、p=0.02)。
観察期間中央値3.8年(四分位範囲:2.5-5.8年)において、腎がん再発は22例(34%)、腎がん死は6例(9.2%)であった。
多変量解析(Cox回帰分析)の結果、≧pT3b(ハザード比[HR]=2.93、95%信頼区間[CI]: 1.11-7.69、p=0.03)、≧Fuhrman grade 3(HR=5.53、95%CI: 1.84-16.7、
p=0.002)に加え、RPIあり(HR=3.98、95%CI: 1.60-9.91、p=0.003)が、無再発生存率の独立した予後予測因子であった。
また、無再発生存率およびがん特異的生存率は、RPIなしの方がRPIありに比べ有意に高率であった(それぞれp<0.001、p=0.001)。
画像所見では、20例(31%)にRPIを疑う境界不明瞭が認められ、このうち病理学的所見でRPIを認めた患者は16例(80%)であり、その予測精度は感度64%、特異度90%であった。さらに、境界不整の有無を含めると、境界不整あり29例(44%)のうちRPIは9例(31%)、境界整16例(25%)のうちRPIは0例であり、これら3群で病理学的RPIを予測すると想定するとAUC=0.842となった。
田中氏は、「今後は、本所見を術前のリスク評価、術後補助療法を含めた治療戦略の構築に発展させたい」と展望を述べた。
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監修 近藤 恒徳先生のコメント
局所進行腎細胞がんでは、ペムブロリズマブによる術後補助療法が本邦でも導入される可能性が高い。しかし、全生存率の改善に有意差はあるもののわずかであり、患者選択が重要であることを示している。病理学的所見が再発予測に最も重要であるが、本研究は画像診断の所見を組み込むことで、さらに予後予測の精度が上がる可能性を示した。とくに、病理学的ステージングに組み込まれることがない腎実質への浸潤所見に注目したことは画期的である。今後はノモグラムの作成により、再発リスクによる効果的な補助療法選択につながることが期待される。
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