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論文紹介
Annals of Nuclear Medicine に掲載された最新の論文をご紹介いたします
骨修飾薬投与中の前立腺がん患者における薬剤関連顎骨壊死の早期発見定量マーカーΔBSIJ
ΔBSIJ: a quantitative marker for early detection of medication-related osteonecrosis of the jaw in patients with prostate cancer receiving bone-modifying agents
Ann Nucl Med. 2025; 39(11): 1192-1200.

更新日:2025年12月05日
骨シンチグラフィを用いたMRONJ早期発見定量マーカー「ΔBSIJ」の論文に関して

監 修
獨協医科大学
泌尿器科 講師
木島 敏樹 先生
骨転移を有する前立腺がん患者さんの治療に広く用いられる骨修飾薬(BMA)ですが、その副作用のひとつである薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は、一度発症すると患者さんのQOLを著しく低下させる重篤な合併症です。しかし、その初期変化は乏しく、日常診療で汎用される画像検査で早期に発見することは、容易ではありませんでした。
そこで私たちは、前立腺がんの骨転移評価で日常的に行われている骨シンチグラフィに着目しました。特に、BMA治療開始前後の骨シンチグラフィにおける顎骨領域の骨集積の変化量(ΔBSIJ)が、MRONJの早期予測に有用ではないかと考えたのが本研究の出発点です。単一時点での評価ではなく、経時的な「変化」を捉えるという新しいアプローチです。
本研究の結果、MRONJ発症者のΔBSIJは非発症者に比べて高く、特に0.039というカットオフ値を用いることで、91%という高い特異度でMRONJ発症を予測できる可能性が明らかになりました。これは、日常診療の中で追加の医療被ばくやコストをかけることなく、MRONJのリスクが高い患者さんを客観的な数値によるスクリーニングで発見できることを意味します。
この方法を用いてMRONJのハイリスク患者を早期に特定することで、専門的な予防介入につなげることが可能になります。今後は、大規模な前向き研究での検証が期待されます。本研究がMRONJの早期発見と予防の一助となり、患者さんのQOL向上に貢献できれば幸いです。
概要
本研究は、骨転移を有する前立腺がん患者において、骨修飾薬(bone-modifying agent: BMA)によって引き起こされる薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw: MRONJ)を早期に発見するため、顎領域のBSIJ(jaw-specific bone scan index)の経時的変化(ΔBSIJ)の有用性を検討した。
研究デザイン
対象と方法
2008年から2023年に当院で骨シンチグラフィを施行した前立腺がん骨転移患者のうち、BMA開始前後のシンチ画像が入手可能な33例を対象とした。顎領域への集積については異常集積の可能性の有無にかかわらず、独自に顎領域のBSI(BSIJ)をBONENAVIで算出し、BMA開始前後の差分をΔBSIJと定義した。ΔBSIJとMRONJの発症との関連を統計学的に解析した。
結果
① MRONJ発症率とΔBSIJ
33例中10例にMRONJが発症した。MRONJ発症群のΔBSIJは、MRONJ非発症群に比べ高値であり(0.05 vs –0.04、Mann‒Whitney U test、p=0.002)、BMA投与後のBSIJ上昇がMRONJ発症と関連していた。
② ROC解析と予測精度
ROC解析ではΔBSIJのAUCが治療前や治療後のBSIJのAUCに比べ最も高く、カットオフ値0.039でMRONJの発症については感度60%、特異度91%、陽性的中率75%、陰性的中率84%となった。
③ MRONJ-free Survival
ΔBSIJが0.039以上の群では、0.039未満の群に比べてMRONJ-free Survivalが短かった(Log-rank検定、p<0.001)。また、ΔBSIJが0.039以上の群が中央値18.4ヶ月で発症したのに対し、0.039未満の群では中央値に達しなかった。
④ 顎骨転移の影響
顎骨転移の有無にかかわらず、MRONJ発症例ではΔBSIJは正の値、非発症例では負の値を示す傾向を認めた。このことから、ΔBSIJは顎骨転移の影響を受けにくく、MRONJ予測指標として有用であることが示唆された。
結論
本研究は、前立腺がん患者におけるMRONJの早期発見において、ΔBSIJが新規かつ有用な定量マーカーになりうることを示した。骨シンチグラフィは日常的に施行される検査である。ΔBSIJの導入は費用対効果も高く、MRONJの客観的なリスク評価を可能とする。今後はより大規模な前向きコホートでの検証などが必要である。
論文のポイント
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ΔBSIJは、MRONJ早期発見のための新しい定量マーカーとなりうる。
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ΔBSIJは、BMA投与開始前や開始後の1点でのBSIJよりも予測精度が高い。
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ΔBSIJは、特異度が高いことから、高リスク患者の選別に有用である。
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骨シンチグラフィは前立腺がんの転移評価で日常的に使用されるため、ΔBSIJの評価はコスト効率的である。
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