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海外論文紹介

Annals of Nuclear Medicine に掲載された論文をご紹介いたします

顎領域のBone Scan Index(BSIJ:BSI of the jaw): 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の早期評価に向けた新しいアプローチ

Bone scan index of the jaw: a new approach for evaluating early-stage anti-resorptive agents-related osteonecrosis

Ann Nucl Med. 2017; 31(3): 201-210.
スキャンの分析
更新日:2025年9月10日
drmizogami.tiff
​監 修

金沢大学大学院

医学系研究科

集学的治療分野

泌尿器科
教授 溝上 敦先生

骨シンチグラフィを用いた新しい評価指標「BSIJmax」論文に関して

骨シンチグラフィを定期的に撮影して骨転移の変化を診ていると、顎骨部の変化もあることに気づいた。一般的に骨転移が顎骨部に生じることは少なく、BMA使用中の顎骨壊死(ONJ)の所見であると気づき、顎骨部の病変に対してスポットでBSIを測定し、BSIJと名付けて解析を進めると、BSIJがONJのステージと非常によく相関することが判明した。
日常診療において、BONENAVIでBSIJを測定することはないが、少なくともBONENAVIで異常病変として検出できるため、ONJの早期発見に役立つものと考えられる。定期的に骨シンチグラフィを行い、BONENAVIでONJの有無も観察することは、患者のQOLを維持するのにも非常に有用である。

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締め切り:2025年10月10日(金)

概要
本研究は、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)の早期診断において、骨シンチグラフィを用いた新しい評価指標「BSIJmax(maximum Bone Scan Index of the Jaw=顎領域のBSIの最大値)」の有用性を検証した研究である。
 
研究デザイン
対象と方法
骨吸収抑制薬を投与した44例のがん患者(前立腺29例、腎5例、乳5例、肺5例)を対象に後ろ向き解析を行った。各患者の骨シンチ画像(全身像)からBONENAVIにより自動で高集積部位を検出し、regional Bone Scan Index(rBSI)を算出した。rBSIのうち顎領域における最大値を「maximum BSI of the jaw(BSIJmax)」と定義し、顎領域の最大値を平均値で割った「取り込み率(uptake ratio: UR)」を算出し、それらとARONJの発症との相関性を分析した。
 
結果
結果
① ARONJ発症群ではBSIJmaxおよびURが有意に高値
ARONJを発症した患者17名は、発症3ヶ月前の時点ですでにBSIJmaxおよびURが有意に高値であった。上顎と下顎でそれぞれカットオフ値を設けたところ、BSIJmaxでは上顎が0.09%、下顎が0.06%、URでは上顎が9.8、下顎が6.0となり、特にBSIJmaxは、上顎において感度88%、特異度96%、下顎において感度64%、特異度89%という診断精度を示した。
BSIJmaxがカットオフ値を超えることでARONJ発症リスクが高まり、本報告ではオッズ比が上顎で182(p=0.0001)、下顎で14(p<0.005)と報告されている。

② BSIJmaxとURは有意に相関
BSIJmaxとURには有意な相関関係があり、特に上顎において両者を組み合わせることでARONJの予測精度はさらに向上した。実際、両指標がカットオフ値を上回った患者は全例(6例/6例)が3ヶ月以内にARONJを発症していた。これらの指標は客観的に算出される定量指標のため、臨床現場において再現性が高く、すでに骨転移の評価に使用されているBSIの応用としても現実的であると結論づけられた。

③ 骨シンチグラフィの意義
本研究は、従来のX線CTやMRIでは捉えにくい骨代謝の早期変化を捉える点において、骨シンチグラフィの優位性を示した。特に義歯や歯科修復物による画像アーチファクトの影響が小さい点は高齢患者にとって有用である。

④ BSIJmaxの有用性
BSIJmaxの高値はARONJ以外にも、歯周病や抜歯などによっても生じうる。しかし、これらもまたARONJのリスク因子であることから、BSIJmaxの異常が高リスク患者スクリーニングのきっかけにもなりうる。

 
結論
本研究は、BSIJmaxという新たな客観的な定量指標を用いたARONJ早期診断の有用性を示し、ARONJの予防・早期対応に向けた臨床的貢献が期待される内容であった。日常のがん診療において、顎領域のBSIJmax高値を見逃さず、歯科的介入や精密検査を促すことが、ARONJの発症予防につながると提案している。
 
論文のポイント
  • BSIJmaxはARONJの早期スクリーニングに有用な新指標である
  • CTやMRIは骨代謝変化に弱く、義歯によるアーチファクトの影響もあるが、骨シンチグラフィは早期変化の検出に優れる
  • 骨吸収抑制薬投与中の患者において、BSIJmaxがカットオフ値を超える場合、ARONJを含めた鑑別診断を行うべきである
  • 通常のBONENAVIではBSIJの数値は表示されないが、骨シンチグラフィ上、顎骨にhot spotが出現したら、まずはONJを疑うべきである

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