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Genitourinary Cancer Today 2025 No.2
第112回日本泌尿器科学会総会:腎細胞がん
SY5-2 IO時代のCNの意義と課題(特にdeferred CN)
大庭 康司郎 先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 泌尿器科学)
更新日:2025年7月1日
近年、転移性腎細胞がん(mRCC)に対し、全身治療後に待機的に原発巣摘除(deffered CN)を行うケースが増えてきている。deffered CNの意義は全身治療の効果がある場合に高く、重要な選択肢となっている。局所浸潤例ではCNによってCR(完全奏効)となる可能性があり、また転移を有する場合はCNによって予後改善が期待できる。一方、一次治療におけるPD(進行)や有害事象の懸念があるが、予後不良と思われる症例においてCNが有効であったケースもあり、症例の選別が今後の課題である。
サイトカイン療法時代、mRCCに対するCN施行は予後を押し上げてきた。それはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)時代も変わらず、後ろ向き研究を含むシステマティック・レビューにおいてもCN施行の有用性が示されている。しかし、その中ではCARMENA試験のみCN非施行の全身治療が前向きに検討され、CN施行との非劣性が証明された1)。また、SURTIME試験では、スニチニブ投与が奏効した後のCNのほうがより有効である可能性が示され、現在のdeferred CNの評価に至っている2)。がん免疫療法(IO)時代においては、TKI時代より薬物療法の成績が向上しており、非CN患者の予後は改善していることが想定され、mRCCに対して即時CNを行うのではなく、全身治療後に機をみてCNを行うという選択肢を選ぶ機会が増えてきている。
RCCの治療戦略におけるdeferred CNの位置づけは、転移の有無によって異なる。転移なし(N0M0)の場合は、隣接臓器浸潤や下大静脈(IVC)腫瘍塞栓があるような即時CNを行うリスクが高い症例に対し、一次治療が奏効した場合にdeferred CNが考慮される。その目的はsurgical CRであり、一次治療には腫瘍縮小効果や腫瘍塞栓の短縮効果が求められる。現在、一次治療に使用できる免疫療法の腫瘍縮小効果は高く、特にニボルマブ+カボザンチニブ、ペムブロリズマブ+レンバチニブが著明であることが報告されている3,4)。腫瘍塞栓に対しても、TKI単剤やIO-TKIの併用療法で効果が認められている5-12)。
転移あり(N1 and/or M1)の場合は、原発巣以外の転移量が多い、悪性度が高いなど、即時CNによる予後改善が難しい症例にdeferred CNが考慮される。その目的はCRとなることで全身治療を休止できること、原発巣がコントロールできないケースでは治療薬の変更を回避できることが挙げられる。一次治療で転移巣の長期コントロールが得られれば、deferred CNの意義は高い。
mRCCに対し、実施のタイミングにかかわらず、CNの施行は予後改善の独立した予測因子であること、またCNのタイミングの違いによる予後の検討でdeferred CNの優越性が報告されており13-15)、mRCCにおけるdeferred CNの有用性は今後も考慮する必要がある。
一方、mRCCに対するdeferred CNの課題として、全身治療によりCNのタイミングを逸する可能性、術前ステータスへの影響、技術的な難易度が挙げられる。現在、一次治療で使用できるレジメンの治療成績は向上しているが、PDは一定数存在する。われわれの検討では、TKIを用いて早期PDになる因子にIMDC poorリスクがある一方で、PS不良で予後不良と思われるmRCCの中にCNが有効であった症例があった。全身治療による有害事象が認められると、その後のCNが難しいケースもあり、何をもって即時CNとdeferred CNを選択すべきか、まだその判断は難しいと思われる。
大庭氏は「deferred CNはmRCCの予後を改善し得る選択肢ではあるが、薬剤による一次治療でCN困難となる症例もあり、症例をより的確に選別することが今後の課題であると考えられる」と述べた。
1) Bhindi B, et al. Eur Urol. 2019; 75: 111-28.
2) Bex A, et al. JAMA Oncol. 2019; 5: 164-70.
3) Motzer RJ, et al. Lancet Oncol. 2022; 23(suppl): 888-98.
4) Viktor G. et al. J Clin Oncol. 2021; 39(15_suppl)
5) Bigot P, et al. World J Urol. 2014; 32: 109-14.
6) Cost NG, et al. Eur Urol. 2011; 59: 912-8.
7) Field CA. et al. Clin Genitourin Cancer. 2019; 17: e505-12.
8) Suzuki K, et al. Int J Clin Oncol. 2025; 30: 532-8.
9) Tanaka Y, et al. Int J Clin Oncol. 2018; 23: 134-41.
10) Khene ZE, et al. Clin Genitourin Cancer. 2025; 23: 102307.
11) Yoshida K, et al. Int J Clin Oncol. 2024; 29: 1538-47.
12) Urabe F, et al. Transl Androl Urol. 2023; 12: 1321-25.
13) Takemura K, et al. Eur Urol Oncol. 2024; 7: 501-8.
14) Fong KY, et al. Urol Oncol. 2025; 43: 348-58.
15) Esagian SM, et al. Eur Urol Focus. 2025; 11: 100-8.
アンカー 1
監修 江藤 正俊 先生のコメント
Deferred CNについては、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 泌尿器科学教室の大庭康司郎先生にご講演いただいた。私の記憶ではdeferred CNという概念はサイトカイン時代にはなく、その概念が広がったのはSURTIME試験で、スニチニブ投与が奏効した後のCNのほうがより有効である可能性が示されてからだと思う。特に、腫瘍縮小効果の高いICI+TKI併用療法の出現でdeferred CNの意義は高まっている。その一方で、薬剤による一次治療でCN困難となる症例もあり、CNのタイミングも含めて症例ごとに検討することの重要性も示していただいた。
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