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Genitourinary Cancer Today 2023
ESMO Congress 2023:腎細胞がん

#LBA88 前治療歴のある進行性淡明細胞型腎細胞がん患者におけるBelzutifanとエベロリムスの比較検討:無作為化オープンラベル第Ⅲ相LITESPARK-005試験

Belzutifan versus Everolimus in Patients with Previously Treated Advanced Clear Cell Renal Cell Carcinoma: Randomized Open-Label Phase 3 LITESPARK-005 Study
Laurence Albiges先生 (Gustave Roussy) 
更新日:2023年12月5日

前治療歴のある切除不能な局所進行性または転移性淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)において、経口の低酸素誘導因子-2α(HIF-2α)阻害薬のBelzutifanがエベロリムスに対し無増悪生存期間(PFS)と奏効率(ORR)を有意に改善することが、無作為化オープンラベル第Ⅲ相試験であるLITESPARK-005試験で明らかになった。


Belzutifanは、がん細胞内で増殖するHIF-2αを阻害することにより、HIF-1βとのヘテロ二量体化と下流のがん化経路を抑制することが報告されている1,2。米国では、特定のフォン・ヒッペル-リンドウ(VHL)病を伴うRCCや膵神経内分泌腫瘍および中枢神経系血管芽腫に対して承認されている。


本試験の対象は、抗PD-1/L1抗体薬またはVEGF受容体チロンシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI)を含む全身療法を1~3ライン受けた後に病勢進行した、切除不能な局所進行性または転移性ccRCC患者である。2020年3月10日~2022年1月19日に746例が登録され、374例がBelzutifan群(1日1回120 mg経口投与)、372例がエベロリムス群(1日1回10 mg経口投与)にランダム化された。層別化因子は、IMDCリスク分類(低リスク vs 中リスク vs 高リスク)とVEGF/VEGFR標的療法の前治療数(1 vs 2~3)であった。


主要評価項目は、RECIST v1.1に基づき盲検下独立中央判定(BICR)が評価したPFSと全生存期間(OS)の2項目、副次評価項目はBICRによるORR、奏効期間(DOR)、安全性、健康関連QOLの患者報告アウトカムなどであった。


有意水準は、PFSにα=0.005、OSにα=0.019、ORRにα=0.001(全て片側)を割り当て、1回目の中間解析(IA1)で帰無仮説が棄却された場合は、それ以上正式な仮説の検証は行わないこととした。データカットオフ日はIA1が2022年11月1日、2回目の中間解析(IA2)が2023年6月13日、観察期間中央値はそれぞれ18.4カ月、25.7カ月だった。


ベースラインの患者背景は2群間に差はなかった。IMDCリスク分類は中リスクが最も多くBelzutifan群66.6%、エベロリムス群65.6%、高リスクがそれぞれ12.3%、12.1%だった。前治療数は、3ラインがBelzutifan群45.2%、エベロリムス群40.3%(以下同順)、2ラインが42.0%、44.6%、1ラインが12.3%、14.0%だった。


BICRによるPFSは、IA1でBelzutifan群がエベロリムス群に対して有意に延長した(ハザード比[HR] 0.75、95% CI: 0.63 – 0.90、p<0.001)。PFS中央値は2群とも5.6カ月だった。IA2においてもBelzutifanのベネフィットは一貫しており、HRは0.74(95% CI: 0.63 – 0.88)、PFS中央値は2群とも5.6カ月、12カ月PFS率はBelzutifan群33.7%、エベロリムス群17.6%、18カ月PFS率はそれぞれ22.5%、9.0%だった。

サブグループ解析では、年齢、性別、人種、地域、IMDCリスク分類、VEGF/VEGFR TKIの前治療数、前治療ライン数などに関わらず、全サブグループでBelzutifan群のPFSベネフィットが示された。


OSにおいては、IA1およびIA2のいずれの時点でも統計学的有意差は示されなかった。IA2でのHRは0.88(95% CI: 0.73 – 1.07、p=0.099)、OS中央値はBelzutifan群21.4カ月、エベロリムス群18.1カ月、18カ月OS率はそれぞれ55.2%、50.6%だった。


ORRは、IA1でBelzutifan群が21.9%(完全奏効[CR] 2.7%)、エベロリムス群が3.5%(CR 0%)、差の推定値が18.4%(95% CI: 14.0 – 23.2、p<0.00001)で、Belzutifan群が有意に高かった。IA2ではBelzutifan群22.7%(CR 3.5%)、エベロリムス群3.5%(CR 0%)だった。奏効期間はBelzutifan群19.5カ月、エベロリムス群13.7カ月だった。

治療期間中央値はBelzutifan群が7.6カ月、これに対しエベロリムス群は3.9カ月だった。グレード3以上(G≧3)の有害事象(AE)の発現率はBelzutifan群61.8%、エベロリムス群62.5%と2群同等だったが、投与中止に至った割合はBelzutifan群5.9%に対しエベロリムス群14.7%だった。G≧3の治療関連AEはそれぞれ38.7%、39.4%だった。Belzutifan群で発現した主なAEは、貧血(82.8%)、疲労(31.5%)、悪心(18.0%)、便秘(16.7%)、末梢浮腫(16.1%)、呼吸困難(15.1%)などだった。


健康関連QOLの患者報告アウトカムをFKSI-DRSおよびEORTC QLQ-C30 GHS/QoLを用いて評価した結果、いずれも悪化を確認するまでの期間がBelzutifan群で有意に延長していた(FKSI-DRS:HR 0.53、95% CI: 0.41 – 0.69、名目上のp値<0.0001、EORTC QLQ-C30 GHS/QoL:HR 0.75、95% CI: 0.58 – 0.96、名目上のp値=0.019)。

以上より、Belzutifanはエベロリムスと比較してPFSおよびORRを統計学的に有意に改善することが認められた。HIF-2α阻害は進行性ccRCCに対する新たな治療機序であり、本試験は免疫チェックポイント阻害薬、血管新生阻害薬に次いで、進行性ccRCC患者に対する有効性を初めて示した第Ⅲ相臨床試験となった。

​*本邦未承認

1. Jonasch E, et al. N Engl J Med. 2021; 385: 2036-2046.
2. Choueiri TK, et al. Nat Med. 2021; 27: 802-805.

 

(Shoichiro Iwase, 岩瀬 昭一郎)
 

アンカー 1
監修 北村 寛先生のコメント
本試験に入る前の治療ラインが一つだった患者、つまりIO+TKI治療後と考えられる患者の割合は、試験群12.3%、コントロール群14.0%であった。従って本試験にエントリーされた多くの患者が、3rdあるいはそれ以降のラインとして、治療を受けたことになる。PFSのハザード比0.75/0.74(IA1/IA2)は良いとして、OSのそれが0.87/0.88 (IA1/IA2)で統計学的有意差を示さなかったことには、正直物足りなさを感じる。今後予定されている最終解析で逆転ホームランはあるのか?現状ではBelzutifan単剤のポテンシャルに限界があるように思えた。後ろのラインになるほどPFSとOSが相関しても良さそうだし、ORRではBelzutifanが圧勝しているのだから、なぜOSの差が詰まったのかを真剣に考察する必要がある。また、試験群では予想通り貧血の頻度が高く、低酸素症やめまいの頻度がコントロール群より高かったことを留意しておくべきである。
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