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Genitourinary Cancer Today 2023
ESMO Congress 2023:膀胱がん

#LBA6 EV-302/KEYNOTE-A39試験:治療歴のない局所進行性または転移性尿路上皮がんに対するエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブの併用療法と化学療法とを比較検討したオープンラベル無作為化第Ⅲ相試験

EV-302/KEYNOTE-A39: Open-Label, Randomized Phase 3 Study of Enfortumab Vedotin in Combination with Pembrolizumab vs Chemotherapy in Previously Untreated Locally Advanced or Metastatic Urothelial Carcinoma
Thomas Powles先生(Barts Cancer Institute)
更新日:2023年12月5日

治療歴のない局所進行性または転移性尿路上皮がん(UC)の一次治療として、ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体エンホルツマブ ベドチンと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用(EV+P)療法が、標準治療の化学療法と比べ、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を統計学的に有意かつ臨床的意義をもって延長したことが、オープンラベル無作為化第Ⅲ相試験のEV-302/KEYNOTE-A39試験の結果から明らかになった。


本試験の対象は、PD-L1の発現に関わらず、シスプラチンまたはカルボプラチンを含む化学療法に適応をもつ、PD-1/L1阻害薬の治療歴がない、未治療の局所進行性または転移性のUC患者であった。886例が登録され、442例がEV+P併用群に、444例が化学療法群(シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン)に無作為に割り付けられた。


EV+P併用群は3週間を1サイクルとし、エンホルツマブ ベドチン(1.25mg/kg)を1日目と8日目に、ペムブロリズマブ(200mg)を1日目に静脈内投与された。エンホルツマブ ベドチンには最長サイクル数は設定されておらず、ペムブロリズマブは最長35サイクルであった。化学療法は最長6サイクルまでであった。層別化因子は、シスプラチン適格の有無、PD-L1発現(高発現、低発現)、肝転移の有無であった。主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSとOSの2項目、副次評価項目はBICRおよび治験医師判定による全奏効率(ORR)、安全性などであった。


ベースラインの患者背景は2群で同等であった。年齢中央値は2群とも69歳、アジア人の割合はEV+P併用群22.4%、化学療法群20.7%、シスプラチン適格有りが各54.3%、54.5%、内臓転移が71.9%、71.6%、PD-L1高発現(CPS≧10)が58.0%、57.9%であった。


データカットオフ日の2023年8月8日時点で、EV+P併用群の32.6%は同治療を継続しており、またEV+P併用群の67.0%、化学療法群の45.7%が試験を継続していた。観察期間中央値は17.2カ月であった。

主要評価項目のPFS中央値は、EV+P併用群は12.5カ月、化学療法群は6.3カ月、ハザード比(HR)は0.45(95% CI: 0.38 – 0.54、p<0.00001)で、併用群で有意な延長が認められた。サブグループ解析の結果からは、年齢(65歳以上、65歳未満)、性別、全身状態(ECOG PS 0、1~2)、原発巣の部位(上部尿路、下部尿路)、肝転移の有無、PD-L1発現(高発現、低発現)、シスプラチン適格の有無の全項目において、一貫したEV+P併用群の優位性が示された。

また、OS中央値についても、EV+P併用群が31.5カ月、化学療法群は16.1カ月(HR 0.47、95% CI: 0.38 – 0.58、p<0.00001)で、併用群に有意な延長が示された。PFSの結果と同様に、どのサブグループにおいてもEV+P併用群の優位性は一貫していた。


副次評価項目のORRは、EV+P併用群が67.7%(このうち完全奏効29.1%、部分奏効38.7%、以下同順)、化学療法群44.4%(各12.5%、32.0%)で、併用群が有意に高かった(p<0.00001)。


二次治療を受けた割合は、EV+P併用群が28.9%、化学療法群が66.2%であった。その内訳は、併用群ではプラチナ系製剤を含む化学療法が24.9%、PD-1/L1阻害薬を含む治療が1.6%、化学療法群ではPD-1/L1阻害薬を含む治療が58.6%(進行後の切替え:26.4%、アベルマブの維持療法:30.4%、その他の維持療法:1.8%)であった。


安全性については、グレード3以上(G≧3)の治療関連有害事象(TRAEs)の発現率は、EV+P併用群で55.9%、化学療法群で69.5%、重篤なTRAEsの発現率は各27.7%、19.6%であった。EVの特に注目すべきG≧3のTRAEsは、皮膚反応(15.5%)、末梢神経障害(6.8%)、高血糖(6.1%)で、ペムブロリズマブの治療緊急有害事象は重度の皮膚反応(11.8%)、肺炎(3.6%)であった。


Powles氏は結論として、これらの結果は、局所進行性または転移性のUCの一次治療として、EV+P併用療法が新たな標準治療となる可能性を支持するものであると述べた。

 

(Maki Ishizaka, 石坂 真希)
 

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監修 北村 寛先生のコメント
本演題はすべての領域において、ESMO2023最大のトピックとなった。
EV-302/KEYNOTE-A39は、まさに歴史を大きく変える結果を示し、会場からは盛大な拍手とスタンディング・オベーションを受けたという。PFSも然る事ながらOSのハザード比が0.47とは、とてつもない差である。化学療法群の患者のうち30.4%がアベルマブ維持療法を、26.4%が二次治療としての免疫チェックポイント阻害薬を受けていた。実臨床でのこれらの実施割合はもう少し高いかもしれないが、EV+Pが新たな標準レジメンになることは間違いない。EV+Pを受けたシスプラチンineligible患者はeligible患者と同等のOSを示し、化学療法群との差がより大きかったこともインパクトがあった。あとは実臨床でプロトコール治療のようにEVを無期限に投与できるかどうか、AE管理の手腕が求められる点が課題かもしれない。
いずれにせよ、尿路上皮がん一次治療はMVACの長いトンネルから抜けた。

 
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