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Genitourinary Cancer Today 2021 No.4
2021 JSCO・JSUO:前立腺がん
#AP1-3 転移性前立腺癌に対する新規AR-axis阻害薬(ARATAs)の治療効果予測因子の推定
西本 紘嗣郎氏(埼玉医科大学国際医療センター 泌尿器腫瘍科)
更新日:2021年12月22日
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)における新規AR-axis阻害薬(ARATAs)の治療効果予測因子として、年齢、CRP、ALPおよびPSA関連因子が推定されたが、LATITUDE試験のhigh riskおよびCHAARTED試験のhigh volumeを規定するGleason scoreや骨転移の数、内臓転移の有無に有意な関連は認められなかった。
前立腺がん患者の約半数はアンドロゲン遮断療法(ADT)の開始から約1年でmCRPCに進展するが、約20%の患者は5年以上ADT感受性を維持する。
近年、本邦においても複数のARATAsがmCRPCの治療薬として承認され、mCRPC患者の全生存期間(OS)を改善することが明らかにされている。しかし、これらのARATAsがどのような患者において高い治療効果を示すのかは、いまだ不明である。そこで今回、mCRPC患者におけるARATAsの治療効果予測因子を特定することを目的に、PROSTAT-BSIコホートを用いた研究が行われた。
PROSTAT-BSI研究は、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)とmCRPCにおけるBone Scan Index(BSI)の有用性を前向きに検討した多施設共同研究であり1)、これまでにBSIが3年生存率の重要な決定因子のひとつであることを報告している2)。
PROSTAT-BSI研究で登録されたmHSPC患者148例のうち、mCRPCに進展した患者は101例であった。PROSTAT-BSI研究の患者の組み入れは本邦でのARATAsの承認前後に行われたため、mCRPC患者101例のうち69例がARATAsまたはARATAs以外の治療を受けていた。この69例を対象として、本研究が実施された。
コホートは、患者因子に応じて閾値により2群に分けられ、さらにARATAs(アビラテロンまたはエンザルタミド)使用の有無で2つのサブグループに分類された。それら各群のサブグループ間でOSを比較し、ARATAsの治療効果予測因子が推定された。
その結果、年齢<71.4歳、CRP≧0.16 mg/dL、ALP≧548 U/Lの患者では、ARATAsによる有意なOSの延長効果が認められた。
一方、BSIではARATAsによる有意な治療効果の差は認められず、治療開始前のヘモグロビン値やPSA、Gleason score、内臓転移の有無においても同様の結果であった。
また、PSA関連因子として、PSA最低値≧1.0 ng/mL、PSA再発までの期間<8.9カ月、ADT開始後3カ月のPSA低下率<98.7%の患者においても、ARATAsによる有意なOS延長効果が認められた。
西本氏は、「今回の結果からARATAsの治療効果予測因子が推定されたが、LATITUDE試験のhigh riskやCHAARTED試験のhigh volumeを規定する因子(Gleason score、骨転移の数、内臓転移の有無)はARATAsの治療効果予測には使用できない可能性が示唆された」と結論付けた。
1)Nakajima K, et al. Int J Urol. 2018; 25(5): 492-9.
2)Nakajima K, et al. Int J Urol. 2021; 28(9): 955-63.
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監修 溝上 敦先生のコメント
前立腺がんに対する治療薬の選択の基準は、これまで予後予測因子に基づいて行われることが多く、予後不良と予測される患者に対してより強力な治療を行おうとする考えが主流である。しかし、予後良好と思われる患者でもホルモン療法の効果の少ない場合や予後不良と思われる患者でもホルモン療法で長期生存する場合も多く見受けられる。そういう意味において、治療効果予測因子を見いだすことは、患者の利益・不利益をうまく選別でき、テーラーメード治療に近づく良い考え方である。まさに、この研究はその考えに即したものと言える。
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