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Genitourinary Cancer Today 2025 No.1
ASCO-GU 2025:膀胱がん

#659 NIAGARA試験より追加の有効性と安全性アウトカムと、pCRが長期アウトカムに与える影響の探索的解析

Additional efficacy and safety outcomes and an exploratory analysis of the impact of pCR on long-term outcomes from NIAGARA
Matthew Galsky 先生(Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York)
更新日:2025年4月14日
シスプラチン適格の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の膀胱全摘除術(RC)前後の治療として、デュルバルマブの追加を検討した第Ⅲ相試験のNIAGARA試験より、有効性と安全性の追加解析および探索的事後解析の結果が報告され、デュルバルマブの追加は遠隔転移の出現、および膀胱がんによる死亡のリスクを減少させることが明らかとなった。さらにデュルバルマブ追加は、病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者、得られなかった患者のいずれにおいても無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)を改善させる傾向が認められた。

本試験の対象は、cT2-T4aN0/1M0でシスプラチン適格のMIBC患者1,063例で、ゲムシタビン+シスプラチンによる術前補助化学療法(NAC)+デュルバルマブ(1,500mg静注)4サイクル後にRCを実施し、術後にデュルバルマブ(1,500mg静注)を8サイクル追加するデュルバルマブ群と、NAC後にRCを実施し、術後治療なしの対照群とに1:1の割合で無作為に割り付けられた。

NIAGARA試験の事前に規定された中間解析の結果、NACにデュルバルマブを併用し、術後にデュルバルマブを単独投与することは、NAC単独に比べ、EFSおよびOSを統計学的に有意に延長し、pCR率を10%向上させることがすでに報告されている1)

主要評価項目はEFSおよびpCR、主要副次評価項目はOS、その他の副次評価項目は無転移生存(MFS)、疾患特異的生存(DSS)、安全性については免疫介在性有害事象(imAE)であった。また探索的事後解析として、pCRを得られた患者と得られなかった患者別のEFSおよびOSの結果が発表された。

ITT集団におけるMFS中央値は、デュルバルマブ群、対照群いずれも未達(NR)、ハザード比は0.67(95%CI: 0.54 – 0.83、名目上のp<0.001)、デュルバルマブの追加は、遠隔転移または死亡のリスクを33%減少させていた。2年MFS率はデュルバルマブ群で75.1%、対照群では65.1%であった。

ITT集団におけるDSS中央値についても2群ともにNR、ハザード比は0.69(95%CI: 0.52 – 0.91、名目上のp=0.008)、デュルバルマブの追加は、膀胱がんによる死亡のリスクを31%減少させていた。2年DSS率はデュルバルマブ群が89.2%、対照群は82.2%であった。

pCR率はデュルバルマブ群は37.3%(199/533例)、対照群は27.5%(146/530例)とデュルバルマブ群で有意に高かった(オッズ比: 1.60[95%CI: 1.23 – 2.08]、名目上のp=0.0005)。pCRが得られた患者コホートと得られなかった患者コホート間で、ベースラインの患者背景に差は認められなかった。

pCRが得られた患者コホートでは、pCRを得られなった患者コホートに比べEFSが延長していた。また、いずれのコホートにおいてもデュルバルマブ併用によるEFSの改善が認められた。OSについても同様の傾向で、pCRが得られた患者コホートの方がOSを延長しており、またいずれのコホートにおいてもデュルバルマブ併用によるOSの改善が認められた。

2年EFS率はpCRが得られた患者コホートでは、デュルバルマブ群92.1%、対照群85.8%(HR 0.58、95%CI: 0.332 – 0.999)、pCRが得られなかった患者コホートでは、デュルバルマブ群53.3%、対照群49.5%(HR 0.77、95%CI: 0.631 – 0.948)であった。

2年OS率はpCRが得られた患者コホートでは、デュルバルマブ群95.5%、対照群91.1%、(HR 0.72、95%CI: 0.367 – 1.426)、pCRが得られなかった患者コホートでは、デュルバルマブ群74.1%、対照群68.9%(HR 0.84、95%CI: 0.660 – 1.068)であった。

既報の通り、有害事象によりNACの中止に至ったのはデュルバルマブ群14%、対照群15%、術後のデュルバルマブの中止に至ったのは8%、手術遅延はデュルバルマブ群で2%、対照群で1%、手術が施行できなかったのは両群ともに1%であった1)

デュルバルマブ群における有害事象について、imAEは21%で認められ、グレード3、4の発現率は3%であった。10%以上の患者で認められたimAEは甲状腺機能低下症であった。なおデータカットオフ時点で、imAEが発現した患者の41%で症状は消失していた。症状が継続していたのは、ほとんどが低グレードの甲状腺機能低下症で、ホルモン補充療法でマネジメント可能であった。

Galsky氏は結論として、これらの結果は、NACにデュルバルマブによる周術期療法を追加することが、シスプラチン適応のMIBC患者に対する新たな治療法として期待できることをさらに裏付けるものであると述べた。

1) Powles T, et al. N Engl J Med. 2024; 391(19): 1773-86.
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監修 北村 寛先生のコメント
本演題では、pCRが得られた患者集団とpCRが得られなかった患者集団の両者において、試験群は対照群より優れたEFSが示された。これまでもネオアジュバント化学療法にてpCRが得られた患者の予後が良好であることは知られていたが、今回は免疫チェックポイント阻害薬を周術期に加えることで、さらに治療成績が向上することを示唆する結果であった。術前GCにデュルバルマブを併用したことでpCR割合は向上しているので、この併用意義に疑うところはない。しかし、対照群には術後補助薬物療法が実施されていないため、術後デュルバルマブがEFS向上にどの程度貢献しているのかは不明である。さらなる長期フォローによるOSの評価、現在進行中の競合試験結果との比較が待ち遠しい。
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