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Genitourinary Cancer Today 2022 No.3
ASCO-GU 2022:前立腺がん

#32 ベースラインのPSMA PET画像に基づく半定量的および視覚的基準を用いたLu-177 PSMA 療法後のmCRPC患者の転帰予測:国際多施設後ろ向き研究

PREDICTING THE OUTCOME OF MCPRC PATIENTS AFTER Lu-177 PSMA THERAPY USING SEMI-QUANTITATIVE AND VISUAL CRITERIA IN BASELINE PSMA PET: AN INTERNATIONAL MULTICENTER RETROSPECTIVE STUDY
堀田 昌利氏(University of California, Los Angeles, USA)
更新日:2022年4月20日
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者のLu-177 PSMA放射性リガンド療法(RLT)への反応性を予測するバイオマーカーとして、ベースラインのPSMA PETによる耳下腺での取り込みを基準にして求めたスコアが有用であることが、後ろ向きコホート研究で明らかとなった。前向きな検証が必要ではあるが、これらのスコアは個々の患者の治療決定や臨床試験のデザイン決定に役立つ可能性が示唆された。

前立腺特異的膜抗原(PSMA)の高発現はPSMA RLTへの良好な反応性と関連する。肝臓でのPSMA発現量を基にLu-177 PSMA療法の適否を判断すると、多くの患者で治療を行うことができるが、その中には予後不良に終わる患者が含まれるため、より正確な基準が必要である。耳下腺はPSMA発現スコアが肝臓より高いため、腫瘍でのPSMAが耳下腺より高発現であることを基準とすれば、PSMA RLTの治療ベネフィットを得られる患者をより正確に選別できる可能性がある。

本試験では、定量的解析と視覚的解析の2つの方法を用い、PSMA PETによる唾液腺に対する全腫瘍の取り込み比率(PSMA PET tumor-to-Salivary Glands ratio = PSGスコア)を求め、Lu-177 PSMA療法による転帰が予測可能かどうかを検証した。

解析対象は、米国、ドイツおよびオーストラリアの計6施設のいずれかで、2014年10月~2019年7月にLu-177 PSMA療法を受けたmCRPC患者237例であった。定量的解析では、Lu-177 PSMA療法施行前のベースラインのPSMA PET/CTデータから、半自動セグメンテーションソフトウェア(qPSMA)を用いて耳下腺に対する全腫瘍の取り込みの比率を求め(qPSGスコア)、患者を高発現(qPSG >1.5)、中発現(qPSG 0.5-1.5)、低発現(qPSG <0.5)の3グループに分類した。視覚的解析では、PSMA PET画像診断の経験が2年以上ある核医学専門医10人が、ベースラインのPSMA MIP画像をもとに、耳下腺より高い取り込みを示す病変が80%を超える患者を高発現、耳下腺より低い取り込みを示す病変が80%を超える患者を低発現、そのどちらでもない患者を中発現とし、3グループに分類した(vPSGスコア)。医師間で分類に食い違いが出た場合は、多数決により決定した。また、医師間および同一医師における再現性は、それぞれFleissとCohenの重み付けΚ係数で検証した。

評価項目は、PSA無増悪生存期間(PSA-PFS)、全生存期間(OS)、PSA奏効(PSA値の50%以上の低下)だった。

定量的解析のqPSGスコアが高発現の患者は23.6%、中発現が68.8%、低発現は7.6%、視覚的解析のvPSGスコアでは、高発現44.7%、中発現40.5%、低発現14.8%だった。医師間の再現性はΚ係数0.68(かなりの一致)、同一医師における再現性はΚ係数0.83(ほぼ完全一致)だった。また67.5%の患者において、qPSGスコアとvPSGスコアが一致した(Cohenの重み付けΚ係数0.60)。

解析の結果、qPSGスコアとvPSGスコアはどちらも、PSA-PFSおよびPSA奏効を予測できることが分かった。PSA-PFS 中央値は、qPSGスコアの高発現グループ7.2カ月、中発現4.0カ月、低発現1.9カ月で、有意な群間差が認められた(p<0.001)。vPSGスコアでのPSA-PFS 中央値は、高発現グループ6.7カ月、中発現3.8カ月、低発現1.9カ月で、こちらも有意差があった(p<0.001)。またPSA奏効は、qPSGスコアの高発現グループ69.6%、中発現38.7%、低発現16.7%、vPSGスコアによる高発現グループ63.2%、中発現33.3%、低発現17.1%だった。

またOSは、高発現と非高発現(中発現+低発現)に分類して比較した結果、qPSGスコア、vPSGスコアともに高発現グループが有意に延長した。OS中央値は、qPSGスコアの高発現グループが15.0カ月、非高発現グループが11.7カ月(ハザード比[HR] 1.5、95% 信頼区間[CI]: 1.1 – 2.2、p=0.014)、vPSGスコアの高発現グループでは14.3カ月、非高発現グループが11.0カ月(HR 1.3、95% CI: 1.0 – 1.8、p=0.039)だった。
 
監修 横溝 晃先生のコメント
Lu-177 PSMA治療は、PSMA-PET陽性のmCRPC患者に対して2022年3月23日にFDAによって承認されたばかりの非常に注目されている新規治療である。このFDAによる承認は、主に1剤以上のARAT使用歴と1~2レジメンのタキサン治療歴のあるPSMA-PET陽性のmCRPC患者を対象としたVISION試験(Sartor O, et al. N Engl J Med 2021; 385(12): 1091-1103)の結果を元としたものである。これまで、PSMA-PET陽性病変の多い患者ほど、治療効果が高いことが判明していたが、PETの性格上、集積の強弱を示す絶対値の算出は困難であり、他部位との比較で間接的に判断するしかなかった。この研究では、半自動セグメンテーションソフトウェア(qPSMA)を用いて耳下腺に対する全腫瘍の取り込みの比率を求めるqPSGスコアと、経験豊富な核医学専門医が、耳下腺の取り込みを基準として3段階に分類するvPSGスコアを用いて予後解析を行い、両者ともに優れた予後予測法であることを明らかとし、最終的にqPSGスコアが再現性と定量性に優れることを示した研究である。今後、Lu-177 PSMA治療は世界に広がっていくと予想され、前向きにこの結果が検証されることが期待される。