top of page
GCtoday_web_back.jpg

Genitourinary Cancer Today 2021 No.3
ASCO 2021:前立腺がん

#5079  第Ⅲ相試験ARAMISの長期観察によるダロルタミドの忍容性と治療効果

Darolutamide tolerability from extended follow up and treatment response in the phase 3 ARAMIS trial
Karim Fizazi氏(University of Paris-Saclay, France)
更新日:2021年8月2日
非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験ARAMISの、観察期間を延長した解析結果から、ダロルタミドは用量調節の必要性が低く、良好な忍容性を示すことが示された。またベースラインからのPSA低下が大きいほど全生存期間(OS)が延長することもわかった。

本試験では、PSA≧2ng/mLでPSA倍加時間が10カ月以下のnmCRPC患者1,509例をアンドロゲン除去療法(ADT)にダロルタミド(600mg 1日2回投与)を追加する群(ダロルタミド群:955例)と、プラセボを追加する群(プラセボ群:554例)に無作為割り付けした。主要評価項目の無転移生存期間(MFS)中央値は、プラセボ群の18.4カ月に対しダロルタミド群40.4カ月(ハザード比[HR]0.41、95%信頼区間[CI]: 0.34 – 0.50、p<0.001)、副次評価項目のOSは2群とも中央値未到達(HR 0.69、95% CI: 0.53 – 0.88、p=0.003)で、いずれもダロルタミド群が有意に延長したことが既に報告されている1,2)。MFSの主要解析後は二重盲検(DB)から非盲検(OL)となり、プラセボ群のうち170例がダロルタミド群にクロスオーバーした(クロスオーバー群)。今回の解析では、観察期間を延長したダロルタミドの忍容性と治療効果を検討した。

忍容性は16週間毎に評価した。薬理学モデリングを用い、治療効果と2年全生存率との関連性を検討した。治療効果の定義はベースラインからのPSA最大低下率(≧90%の低下)とした。また、ベースラインの共変量であるPSA、PSA倍加時間、年齢、ECOGパフォーマンスステータス(PS)、および診断時のグリーソンスコアで調整したランドマーク感度解析を行い、16週時のPSA奏効とOSとの関連性を確認した。

ダロルタミド群の治療期間中央値は、DB群18.5カ月、DB+OL群25.8カ月、プラセボ群(DB期間、以下同)の治療期間中央値は、11.6カ月、クロスオーバー群のダロルタミドによる治療期間中央値は11.0カ月だった。

用量調節を必要とした割合は、ダロルタミドDB群16.6%、DB+OL群19.2%、プラセボ群10.5%、クロスオーバー群7.1%であった。これらのうち推奨用量に戻せた割合は、それぞれ89.9%、89.6%、89.7%、83.3%だった。

有害事象による投与中止は、ダロルタミドDB群8.9%、DB+OL群10.5%、プラセボ群8.7%、クロスオーバー群で4.7%であった。

PSA奏効率(ベースラインから≧50%低下)は、ダロルタミドDB群では84.0%、DB+OL群では84.5%、これに対しプラセボ群は7.9%、クロスオーバー群は31.6%だった。

ダロルタミドDB+OL群においてのベースラインからのPSA最大低下率中央値は92.7%であった。2年全生存率はPSA最大低下率と正の相関があり、PSA値が90%以上低下した患者では2年全生存率が95.1%だった。

またランドマーク感度解析の結果、16週時のPSA低下が90%以上の患者のOSと50%以上90%未満の患者のOSの比較では、HR 0.39(95%CI:0.25 – 0.59、χ  p=0.000015)、50%未満の患者との比較ではHR 0.18(95%CI:0.11 – 0.31、χ  p<0.000001)と、16週時のPSA最大低下率はOSとの間に正の関連が認められた。一方、ベースラインの共変量がOSに与える影響はほとんどなかった。

1) Fizazi K, et al. N Eng J Med. 2019; 380(13): 1235-46. 
2) Fizazi K, et al. N Eng J Med. 2020; 383(11): 1040-9. 
2
2
アンカー 1
監修 鈴木 和浩先生のコメント
nmCRPCに対するダロルタミドの臨床試験であるARAMIS試験では、プライマリーエンドポイントである無転移生存期間(MFS)とOSの有意な延長と良好な副作用プロファイルが報告されている。盲検解除後の観察期間を延長しても副作用プロファイルには新たな懸念事項はみられず、実臨床の印象と同様に忍容性が良好であった。また、16週におけるPSA低下が90%以上群と90%未満の群でOSに有意差がみられた(HR0.39、95%CI: 0.25 - 0.59)。ARTAによる治療効果は治療初期のPSA反応率との関連がmCRPCでも示されているがnmCRPCにおいても同様であった。今回16週という中期での評価であったが、早期からのPSA kineticsと抗腫瘍効果との関連結果に興味が持たれる。
bottom of page