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Genitourinary Cancer Today 2021 No.3
ASCO 2021:前立腺がん

#5002 エンザルタミド+ラジウム223併用療法とエンザルタミド単独療法を比較したEORTC 1333/PEACE-3試験において、骨吸収抑制薬投与の必須により骨折率が低下:最新の安全性解析より

Decreased fracture rate by mandating bone protecting agents in the EORTC 1333/PEACE-3 trial combining Ra-223 with enzalutamide versus enzalutamide alone: An updated safety analysis
Silke Gillessen 氏 (Oncology Institute of Southern Switzerland, Switzerland)
更新日:2021年8月2日
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)において、エンザルタミド(ENZ)+ラジウム223(Ra223)併用療法とENZ単独療法とを比較検討するPEACE-3試験から、安全性解析の最新データが報告され、骨吸収抑制薬(BPA)を投与することで2群とも骨折率が低下したことが明らかになった。

アンドロゲン除去療法(ADT)は骨密度の減少を引き起こすことが知られており、BPA投与がADT治療下にある患者の骨密度減少と骨関連イベント(SRE)のリスク低減に関連することは既報の通りである1-6)。進行性前立腺がん患者で高頻度に発現する骨の合併症には、骨粗しょう症を原因とする骨折と、病理学的骨折や脊髄圧迫、整形外科手術および緩和放射線療法など、骨転移が発端となっているSREの2つの異なる機序がある。これらのSREを防ぐため、多くのガイドラインでは骨転移を伴うCRPC患者に対しBPAの投与を推奨している。

Ra223とアビラテロン+prednisone*/プレドニゾロン(AAP)の併用療法とプラセボ+AAPを比較検討したERA 223試験では、Ra223+AAP併用群で骨折と死亡の割合がプラセボ+AAP群と比較して高かったため、2017年11月独立データモニタリング委員会(IDMC)の推奨により非盲検化された。2群とも骨折がみられた患者の大多数で骨折部位に転移はなく、骨折は外傷性や骨粗しょう症によるものであった。また患者の60%が登録時点でBPAの投与を受けていなかったが、事後解析の結果、いずれの群もBPAの投与により骨折率が大幅に減ったことが明らかとなった7)

PEACE-3試験ではERA 223試験と似通った患者を対象としており、適格基準は、骨転移を2個以上有し、脳転移または内臓転移がない骨転移を主としたmCRPCで、無症候性または軽度症候性、WHOパフォーマンスステータス(PS)0または1、cyp17阻害薬やENZ、Ra223、その他の放射性核種治療および半身照射未治療であることなどであった。計画登録数は560例で、ENZ(160 mg 1日1回)+Ra223(55 kBq/kg静注、4週毎6サイクル)群とENZ単独療法群に1:1の割合で無作為割り付けした。主要評価項目は画像評価による無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、疾患特異的生存期間、症候性骨関連事象などとした。

ERA 223試験の事後解析の骨折データの報告から、PEACE-3試験でも、すべての患者に対しBPAの投与が必須となった。2019年のASCOで、安全性の早期解析の結果、BPA投与により骨折率が低下したことが報告されており、今回の発表はその最新データの報告であった。

データカットオフ日の2021年4月時点で計267例が登録されていたが(ENZ+Ra223群134例、ENZ単独療法群133例)、そのうちBPAの使用が必須となった後に登録されたのは148例、治療を開始していたのはENZ+Ra223群122例、ENZ単独療法群129例だった。
BPA投与が必須となる前のBPA(デノスマブまたはビスホスホネート)投与率は46.1%だったが、必須となった後は96.3%にまで上昇した。

BPAを投与しなかった患者は、ENZ+Ra223群35例、ENZ単独療法群32例で、骨折累積発現率は、12カ月時点でENZ+Ra223群が37.1%、ENZ単独療法群が15.6%、18カ月時点でそれぞれ45.9%、21.9%、21カ月時点ではそれぞれ52.0%、21.9%だった。これに対しBPAを投与した患者は、ENZ+Ra223群87例、ENZ単独療法群97例で、骨折累積発現率は、12カ月時点でENZ+Ra223群が2.7%、ENZ単独療法群は2.6%、18カ月時点および21カ月時点でそれぞれ4.3%、2.6%と、大幅に減少していた。

以上の結果からGillessen氏は、BPAの投与により両群の骨折リスクは良好にコントロールされたことが確認できたとし、この安全性解析の結果は、骨転移を伴うmCRPC患者の治療においてBPAにより骨関連の合併症を予防することの重要性を裏付けるものだと考察した。IDMCは今後も注意深い監視を継続する予定である。

ディスカッサントのLisa Horvath氏(University of Sydney, Australia)は、本解析によりBPAがCRPC患者の骨折率を改善させることが確認できたとした上で、無作為化された比較ではないことや解析対象が少数であること、また毒性やQOLはまだ報告されていないことを指摘した。顎骨壊死に対する懸念については、CRPC患者に使用する用量でもその発現率は非常に低く、骨折率低下のベネフィットとのバランスを考慮すると、BPAをより頻繁に使用すべきであることを証明していると考えられる、と述べた。

*本邦未承認

1) Smith M, et al. N Engl J Med.  2009; 361(8):745-55. 
2) Greenspan SL, et al. J Clin Oncol. 2008; 26(27): 4426-34.
3) Smith M, et al. J Urol. 2003; 169(9): 2008-12.
4) Michaelson MD, et al. J Clin Oncol. 2007; 25(9): 1038-42.
5) Saad F, et al. J Natl Cancer Inst. 2004; 96(11): 879-82.
6) Fizazi K, et al. Lancet. 2011; 377(9768): 813-22.
7) Smith M, et al. Lancet Oncol. 2019; 20(3): 408-19.
 
監修 鈴木 和浩先生のコメント
ラジウム223とアビラテロンは、それぞれの薬剤がSSE、SREのリスク低減、OSの改善を示していただけに、併用による臨床試験ERA223において、骨折リスクの増加、OSの改善がみられなかったことは教訓的であり(Smith M, et al. Lancet Oncol. 2019; 20(3): 408-19) 、あらためて前立腺がん治療における骨マネージメントの重要性を認識することとなった。現在エンザルタミドとラジウム223の併用は臨床上使用が可能であるため、この試験結果からも、骨吸収抑制薬を適切に併用することが必須である。今後、抗腫瘍効果の解析結果が待たれる。