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Genitourinary Cancer Today 2026 No. 1
ASCO-GU 2026:膀胱がん
#LBA633 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)におけるctDNAに基づくアテゾリズマブ術後補助療法:IMvigor011試験におけるctDNA動態の探索的解析
Circulating tumor (ct)DNA-guided adjuvant atezolizumab (atezo) in muscle-invasive bladder cancer (MIBC): Exploratory analysis of ctDNA dynamics in the IMvigor011 trial
Joaquim Bellmunt先生(Harvard University)
更新日:2026年5月8日
筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象とした第Ⅲ相IMvigor011試験の探索的解析により、根治的膀胱全摘除術後のctDNAは再発リスクの層別化に有用であることが示唆された。さらに、未治療のctDNA陽性例の解析では、陽性判定の時期やctDNA濃度が無病生存期間(DFS)や全生存期間(OS)と関連することが示された。一方で、術後補助療法としてのアテゾリズマブは、陽性判定の時期や濃度にかかわらず一貫した有効性を示した。
IMvigor011試験の対象は、根治的膀胱全摘除術後6~24週以内の、組織学的に確認された(y)pT2~T4aN0M0または(y)pT0~T4aN+M0のMIBC患者であった。術後は最大1年間のサーベイランス期間として、6週間ごとにctDNA検査、12週間ごとに画像検査を実施した。いずれかの時点でctDNA陽性となり、かつ画像上再発を認めない患者を、アテゾリズマブ群(1,680 mgを4週間ごと投与)またはプラセボ群に2:1で無作為に割り付け、最大1年間の治療期を設けた。第1回中間解析では、アテゾリズマブ群はプラセボ群と比較して、主要評価項目のDFSおよび副次評価項目のOSにおいて有意な改善を示している1)。
ctDNA検査には個別化された腫瘍情報に基づく16-plex mPCR-NGSアッセイを用い、血液サンプル中に2つ以上の変異が検出された場合をctDNA陽性と定義した。また、この陽性/陰性判定に加え、 サーベイランス期および治療期におけるctDNA動態も評価した。
登録された761例のうち、379例がctDNA陽性となった。そのうち250例が無作為化され、アテゾリズマブ群に167例、プラセボ群に83例が割り付けられた。
ctDNA陽性例全体(379例)の解析では、陽性判定の時期が遅いほど、初回陽性時のctDNA濃度は低い傾向が示された。病理学的リスク別に分類すると、リスクが高いほどctDNA陽性判定は早く、かつ濃度も高い傾向が認められた。しかし、同一の病理学的リスク内でのばらつきが大きく、病理所見のみではctDNAの陽性判定時期や濃度を十分に予測することは困難であった。
未治療のctDNA陽性集団(画像上再発などによりスクリーニングで除外された症例やプラセボ群を含む212例)の予後解析では、ctDNA陽性判定の時期は予後と関連しており、初回検査で陽性であった症例(初回陽性例)は、後から陽性判定された症例(後発陽性例)と比較して予後不良であった。 DFS中央値は、初回陽性例で6.0カ月(95%CI: 5.1 – 6.6)、後発陽性例で11.1カ月(95%CI: 9.2 – 13.5)であり、24カ月DFS率は各8.2%、22.3%であった。一方、ctDNA陰性が持続した例(陰性持続例、357例)のDFS中央値は未到達であり、24カ月DFS率は88.4%であった。OSも同様の傾向がみられ、初回陽性例のOS中央値は21.9カ月(95%CI: 15.0 – NE)、後発陽性例は35.1カ月(95%CI: 24.9 – NE)であり、24カ月OS率は各48.5%、71.8%、陰性持続例のOS中央値は未到達、24カ月OS率は97.1%であった。
同集団のDFS中央値をctDNAの濃度別にみると、低濃度(0.1 MTM/mL*以下)が12.2カ月(95%CI: 9.3 – 16.0)、中濃度(0.1 MTM/mL超 3 MTM/mL以下)が7.8カ月(95%CI: 6.7 – 9.7)、高濃度(3 MTM/mL超)が5.3カ月(95%CI: 4.1 – 6.9)であった。OS中央値も低濃度が35.1カ月(95%CI: 21.9 – NE)、中濃度が29.3カ月(95%CI: 19.3 – NE)、高濃度が21.1カ月(95%CI: 12.2 – 29.7)と、濃度が高いほど予後不良である傾向が認められた。
一方、術後補助療法としてのアテゾリズマブは、陽性判定の時期や濃度にかかわらず概ね一貫した有効性を示した。プラセボ群に対するDFSのHRは、初回陽性例が0.62(95%CI: 0.42 – 0.91)、後発陽性例が0.67(95%CI: 0.40 – 1.10)、濃度別では低濃度が0.81(95%CI: 0.46 – 1.42)、中濃度が0.59(95%CI: 0.38 – 0.91)、高濃度が0.47(95%CI: 0.24 – 0.94)であった。同様の傾向はOSでも認められた。
さらに、アテゾリズマブ群のctDNA動態解析では、アテゾリズマブはctDNAの消失および減少に寄与し、ctDNA消失率は37%、2倍以上の減少は15%と、半数以上に消失あるいは減少の変化が認められた。一方、プラセボ群の消失率は22%、2倍以上の減少は10%にとどまり、2倍以上の増加は38%と多かった。アテゾリズマブ群のctDNA変化と予後との関連を検討したところ、ctDNA消失例のDFS中央値は未到達、2倍以上の減少例は14.5カ月(95%CI: 8.3 – 25.1)、変化なし例は8.2カ月(95%CI: 6.1 – 10.3)、2倍以上の増加例は4.3カ月(95%CI: 2.7 – 5.8)であり、もっとも予後不良であった。
以上より、ctDNAは再発リスクの層別化に有用であり、単なる陽性/陰性にとどまらず、ctDNAの陽性判定時期や濃度に基づき予後を評価できる可能性が示唆された。また、アテゾリズマブはctDNA陽性例でctDNAの消失あるいは減少を促進させ、これらの動態はDFSの改善と関連していた。
*1mL当たりの平均腫瘍分子数
1) Powles T, et al. N Engl J Med. 2025; 393(24): 2395-2408.
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監修 三宅 秀明 先生のコメント
IMvigor011試験の結果、筋層浸潤性膀胱がんにおけるctDNA所見に基づく新たな術後補助療法として、アテゾリズマブの導入に期待が持たれている。本研究では、IMvigor011試験におけるctDNA動態が詳細に検証されたが、概ね予想される結果が確認されたと言ってよいだろう。このことは、IMvigor011試験において創出されたデータの信頼性が高いことを改めて裏付け、また一般論としての筋層浸潤性膀胱がん術後の再発におけるctDNA動態の今後の研究にも大きな示唆を与えるものである。
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