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Genitourinary Cancer Today 2026 No. 1
ASCO-GU 2026:前立腺がん

#319 PSMA PET/CT時代において、前立腺がんの生化学的再発に対するPhoenix基準は再定義すべきか?
Is it time to redefine the Phoenix criterion for biochemical failure in the era of PSMA PET/CT?

Prantik Das先生 (University Hospitals of Derby and Burton NHS Foundation Trust) 
更新日:2026年5月8日
根治的放射線療法(RT)後の前立腺がんにおける生化学的再発(BCR)に関して、PSMA PET/CTがPSA 4 ng/mL以下の段階でも高い検出率を示し、Phoenix基準に達する以前からリンパ節転移や遠隔転移を検出できることが、後ろ向きコホート研究から明らかになった。

前立腺がんのBCRは、「PSA値が最低値(nadir)から 2 ng/mL以上の上昇」と定義されるPhoenix基準により判断されるが、PSMA PET/CTはこれより低いPSA値でも再発や転移病変の検出が可能とされる。本研究では、根治的RT後の前立腺がん患者を対象に、PSA値に応じたPSMA PET/CT陽性の検出率および臨床的有用性を評価した。

本研究の対象は、2021年1月から2024年12月までの期間に単一医療システム内で根治的RTを受けた前立腺がん患者とした。適格基準は、①限局性または局所進行性の前立腺がんに対して根治的RTを受けていること、②再発疑いまたはPSA上昇後にPSMA PET/CTを受けていること、③画像検査時のPSA値が確認可能であることの3点であった。前立腺全摘出術後にサルベージRTを受けた症例は除外された。PSMA PET/CTにはFDA承認済みのPSMAトレーサーを用い、PSMA画像診断に熟練した核医学専門医が読影した。前立腺がんの再発または転移として疑われる部位に、周囲より明らかに強い限局性の集積を認めた場合、PSMA PET/CT陽性と判定した。

収集したデータ項目は、画像診断時の年齢、初回グリーソングレードグループ(GG)、PSMA PET/CT施行時のPSA値、PSMA PET/CTの結果(陽性、陰性)、病変部位(局所再発、リンパ節転移、骨転移、内臓転移、またはそれらの組み合わせ)であった。患者はPSA値に基づき、2 ng/mL未満、2~3 ng/mL、3~4 ng/mL、4 ng/mL超の4集団に層別化した。

その結果、149例(81.8%)にPSMA集積を示す病変が認められ、その内訳は2ng/mL未満集団が30例(20.1%)、2~3 ng/mLが23例(15.4%)、3~4 ng/mLが18例(12.1%)、4 ng/mL超が78例(52.3%)であった。
各集団の病変分布は、PSA値2 ng/mL未満がリンパ節転移20例(66.7%)、骨転移3例(10.0%)、局所再発+リンパ節転移+骨転移2例(6.7%)、局所再発+リンパ節転移2例(6.7%)、局所再発+内臓転移(骨転移合併の可能性あり)1例(3.3%)であった。2~3 ng/mLはリンパ節転移14例(60.9%)と最多で、骨転移7例(30.4%)、局所再発+リンパ節転移+骨転移4例(17.4%)、内臓転移のみは2例(8.7%)であった。一方、PSA値3~4 ng/mLはリンパ節転移6例(33.3%)、骨転移6例(33.3%)、リンパ節転移+骨転移3例(16.7%)、内臓転移のみ2例(11.1%)であった。

さらに、2 ng/mL未満集団のグリーソンパターンは、グリーソン7(GG 2~3)が16例(53.3%)、グリーソン8(GG 4)が8例(26.7%)、グリーソン9(GG 5)が6例(20.0%)であり、高グレード病変を多く含んでいた。高グレード腫瘍ではPSMA発現が亢進することが知られており、そのためPhoenix基準に達する前の低PSA域でもPSMA PET/CTで検出されやすい可能性がある。

PSMA陽性患者における初回の根治治療はRTがもっとも多く、次いで手術、手術+RTであった。小線源療法や全身療法(ADT+化学療法)は少数例にとどまった。比較的低PSA値でPSMA PET/CT陽性となった患者でも、初回治療は局所治療が主体であり、さらに一部の症例では手術後にRTが追加されていたことから、この集団が生物学的に高リスクであり、積極的な治療戦略が選択されていた可能性が示唆された。

以上の結果を踏まえ、本研究には後ろ向き研究という限界があるものの、PSMA PET/CTはPSA値4 ng/mL以下でも再発および転移病変を高感度で検出し、特にPhoenix基準未満の段階でもリンパ節転移や遠隔転移を検出し得ることが示された。これにより、Phoenix基準を画像検査開始の実質的なトリガーとして用いる現行の考え方は見直しが必要であり、早期のPSMA PET/CTは迅速な治療介入や臨床転帰改善に寄与する可能性があると考えられる。
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監修 上村 博司 先生のコメント
現在、本邦でのPSMA PET/CTは、177Lu-PSMA-617治療のコンパニオン診断に限られているが、前立腺がんのステージングや前立腺局所治療後の転移検索に使用したい画像ツールである。この演題は後ろ向き研究であるが、根治的RT後のBCRにおいてPSMA-PET/CTを用いれば、PSA値4 ng/mL以下でも再発および転移病変を高感度で検出することが確認された。根治的RT後の再発定義で定着しているPhoenixクライテリアでは、PSMA-PET/CTを用いると高い割合で転移や再発が見つかっているため、このクライテリアは時代にそぐわなくなっているのではないか。オリゴ転移などの早期診断は治療による転移拡散を抑制できるため、Phoenixクライテリアの変更は急ぐべきと考える。
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