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Genitourinary Cancer Today 2026 No. 1
ASCO-GU 2026:前立腺がん
#174 転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者におけるLu 177 zadavotide guraxetan*の薬物動態および線量評価:ECLIPSE試験サブスタディの結果
Pharmacokinetics and dosimetry of Lutetium Lu 177 zadavotide guraxetan in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer (mCRPC): Results from the ECLIPSE substudy
Frankis Almaguel先生 (Loma Linda University Health Cancer Center)
更新日:2026年5月8日
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者を対象としたLu 177 zadavotide guraxetan*の第Ⅲ相ECLIPSE試験から、投与後の臓器線量の分布と薬物動態を検討したサブスタディの結果が報告された。その結果、Lu 177 zadavotide guraxetanは主に腎臓、膀胱、涙腺、唾液腺、消化管の一部に分布し、6サイクル投与を想定した腎臓への累積吸収線量は、事前規定の許容閾値23 Gyを下回ると推定された。
ECLIPSE試験の対象は、アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療後に進行したmCRPCで、盲検下独立中央判定でPSMA-PETによるPSMA陽性が確認された患者であった。主な除外基準は、CRPCに対する化学療法歴、ECOG PSが2以上、骨シンチグラフィで全身骨への広範囲な転移(スーパースキャン)が確認されていることなどであった。ただし、ホルモン感受性期に施行された化学療法は、投与回数が6回以下の場合に限り許容された。Lu 177 zadavotide guraxetanの目標投与量は7.4 GBq± 10%(200 mCi)で、6週ごとに最大6サイクル静脈内に投与された。
線量評価は、投与後4、24、48、168時間にSPECT-CT検査を実施し、薬物動態解析用の採血は投与前と投与後1、4、24、48、168時間に行った。画像解析にはInvicro社のVivoQuantソフトウェアを用いMIRD法の原則に基づいて定量化した。臓器および全身の放射線吸収線量の算出にはOLINDAソフトウェアを用い、赤色骨髄の吸収線量は腰椎L2~L4のCTベース分割により推定した。また、6サイクルにわたる累積放射線吸収線量は、1サイクル目のデータを基に推定した。
本サブスタディには27例が組み入れられたが、1例はスーパースキャンのパターンを伴う顕著な骨病変のため解析から除外され、最終的に26例が評価対象となった。本剤の主な集積部位は腎臓、膀胱、消化管、涙腺、唾液腺であった。平均吸収線量(±標準偏差)は左結腸0.47±0.31 Gy/GBq、直腸0.44±0.30 Gy/GBq、腎臓0.41±0.15 Gy/GBq、膀胱0.41±0.05 Gy/GBq、涙腺0.40±0.36 Gy/GBq、右結腸0.25±0.17 Gy/GBq、唾液腺0.19±0.16 Gy/GBqであった。膀胱への集積が認められたことから、主要な排泄経路は尿中排泄と考えられた。赤色骨髄での平均吸収線量は0.08±0.12 Gy/GBq、変動係数は1.56とばらつきが大きかったが、びまん性骨病変を有する6例が高値であり、これらの症例を除く20例では0.02±0.02 Gy/GBqと低かった。
1サイクル目の腎臓での吸収線量を基に6サイクル総投与量44.4 GBqにおける累積吸収線量を算出すると、平均吸収線量は18.2 Gyと推定され、事前規定の許容閾値23 Gyを下回った。唾液腺および涙腺の累積吸収線量は各8.4 Gy、17.8 Gyであった。
薬物動態解析では、血漿中濃度は時間の経過とともに低下し、初期の急速な減少相と、その後の緩徐な消失相からなる二相性のプロファイルを示した。各パラメータの平均値±標準偏差は、分布半減期1.89±0.34時間、消失半減期14.70±10.10時間、クリアランス13.06±16.50 L/時で、本剤の大部分は比較的速やかに血漿から消失すると考えられた。
以上より、Lu 177 zadavotide guraxetanは腎臓を含む主要臓器への累積被ばく線量が許容範囲内に収まり、赤色骨髄吸収線量のばらつきは骨病変量の影響を強く受けたものの、全体として良好な薬物動態プロファイルを示した。これらの結果は、本剤が最大6サイクルの治療において安全に投与可能であることを支持するものであり、現行の国際ガイドラインとも整合する結果であった。
*本邦未承認:β線放出放射性同位元素ルテチウム177と結合した前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするリガンド製剤
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監修 上村 博司 先生のコメント
本邦をはじめグローバルで行われている177Lu-PSMA-617治療の代謝動態は、腎臓、肝臓、涙腺、唾液腺、消化管などであり、投与後12時間で70%が尿中に排泄される。ほとんどの症例が、放射能の退室基準以下を示して退院できる。
この演題ではLu 177 zadavotide guraxetanの薬物動態プロファイルを報告しており、腎臓を含む主要臓器への累積被ばく線量が許容範囲内に収まっている。これら放射性リガンド療法のLu177治療はいずれも腎臓への集積が多いため、腎機能障害のある前立腺がん患者に対しての投与は注意を要する。放射能を用いたPSMA治療の開発が展開されるなか、いかに臓器への侵襲を抑えて有効な治療ができるかが重要な課題である。
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