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Genitourinary Cancer Today 2022 No.3
ASCO-GU 2022:前立腺がん

#13 第Ⅲ相ARASENS試験における全生存期間の結果:転移性ホルモン感受性前立腺がんにおいて、アンドロゲン除去療法+ドセタキセル併用にダロルタミドの追加をプラセボと比較検討

Overall survival with darolutamide versus placebo in combination with androgen-deprivation therapy and docetaxel for metastatic hormone-sensitive prostate cancer in the phase 3 ARASENS trial
Matthew R. Smith氏(Massachusetts General Hospital Cancer Center, USA)
更新日:2022年4月20日
転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、標準治療であるアンドロゲン除去療法(ADT)+ドセタキセルの併用に、ダロルタミドを追加する3剤併用療法(triplet治療)が、ADT+ドセタキセルのみと比べ全生存期間(OS)を有意に延長させたことが第Ⅲ相試験のARASENS試験の結果から明らかとなった。去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に進行するまでの期間や疼痛増悪までの期間、症候性骨関連事象(SSE)初発までの期間などの副次評価項目においても、ダロルタミド併用群は有意に延長した。以上の結果より、ADT+ドセタキセル+ダロルタミドによるtriplet治療がmHSPCにおける標準治療となり得ることが示唆された。

主な適格基準は、ECOG PSが0~1でADT+ドセタキセルの投与が検討されているmHSPC患者。2016年11月~2018年6月に、23カ国286施設から1,306例が登録され、651例がADT+ドセタキセルにダロルタミド(600 mg、1日2回経口投与)を追加する群、655例がADT+ドセタキセルにプラセボを追加する群に割り付けられた。ADTは無作為化前12週以内に開始され、ドセタキセルは両群とも無作為化から6週間以内に開始し、計6サイクル投与した。層別化因子は、転移ステージ(M1a* vs M1b** vs M1c***)とアルカリホスファターゼ(ALP)値(ULN****未満 vs ULN以上)だった。
※プラセボ群に割り付けられた1例がダロルタミドの投与を受けており、本報告は全体1,305例、ダロルタミド群651例、プラセボ群654例のデータ。

主要評価項目はOS、副次評価項目はCRPCに進行するまでの期間、疼痛増悪までの期間、SSEのない生存期間、SSE初発までの期間、後続の全身性抗腫瘍療法開始までの期間、疾患関連の身体的症状悪化までの期間、7日間以上連続するオピオイド使用の初回までの期間、安全性であった。
ベースラインの患者背景は両群同等だった。年齢中央値は両群67歳、初回診断時にグリソンスコアが≧8だった割合はダロルタミド併用群77.6%、プラセボ群78.9%、初回診断時にM1(de novo転移)がそれぞれ85.7%、86.5%、骨転移ありが79.4%、79.5%、内臓転移ありが17.1%、18.0%だった。

OSの主要解析はイベント数が533例に達した時点で行われ、ダロルタミド併用群はプラセボ群と比べOSが有意に延長したことが示された(ハザード比[HR] 0.68、95%信頼区間[CI]: 0.57 – 0.80、p<0.001)。OS中央値はダロルタミド併用群未到達に対しプラセボ群48.9カ月、4年OSはダロルタミド併用群62.7%に対してプラセボ群50.4%だった。

ダロルタミド併用群の56.8%とプラセボ群の75.6%が1種類以上の後治療を受けていた。主な治療薬はアビラテロン(ダロルタミド併用群35.6% vs プラセボ群46.9%)、エンザルタミド(15.2% vs 27.5%)、カバジタキセル(18.1% vs 18.0%)、ドセタキセル(14.6% vs 18.0%)、ラジウム-223(6.0% vs 6.9%)などで、プラセボ群の66%がアンドロゲン受容体標的薬(ARAT)を1種類以上投与されていた。

事前に設定したサブグループ解析においても、転移ステージやALP値、年齢、人種、グリソンスコアなどに関わらず、ダロルタミド併用群の優位性は一貫していた。De novo転移例におけるHRは0.71(95%CI: 0.59 – 0.85)、再発転移例のHRは0.61(95%CI: 0.35 – 1.05)だった。

副次評価項目のCRPCに進行するまでの期間(HR 0.36、95%CI: 0.30 – 0.42、p<0.001)、疼痛増悪までの期間(HR 0.79、95%CI: 0.66 – 0.95、p=0.01)、SSE初発までの期間(HR 0.71、95%CI: 0.54 – 0.94、p=0.02)、後続の全身性抗腫瘍療法開始までの期間(HR 0.39、95%CI: 0.33 – 0.46、p<0.001)も、ダロルタミド併用群が有意に延長していた。

グレード3~4の有害事象(AE)の発現率はダロルタミド併用群66.1%、プラセボ群63.5%で、その多くが、好中球減少症や発熱性好中球減少症、貧血などドセタキセル関連の事象だった。ARATで特に注目すべきAEでは、疲労(ダロルタミド併用群33.1% vsプラセボ群32.9%)、骨折(7.5% vs 5.1%)、転倒(6.6% vs 4.6%)、発疹(16.6% vs 13.5%)、糖尿病および高血糖(15.2% vs 14.3%)、血管拡張および顔面紅潮(20.4% vs 21.7%)、高血圧(13.7% vs 9.2%)、心疾患(10.9% vs 11.7%)などが発現したが、薬剤の曝露量の違いで調整した各AEの発現率は、2群に差はなかった。


*      :非所属リンパ節転移のみ
**    :骨転移±リンパ節転移あり
***  :内臓転移±リンパ節または骨転移あり
****:基準範囲上限
 
監修 横溝 晃先生のコメント
本邦では2021年9月にmHSPCに対するupfront治療として、ドセタキセルの使用が保険収載されたが、具体的にどのような症例が適しているのか、また、ARAT+ADTと比較してどちらがメリットがあるのかなど、明確な患者選択基準はこれまで示されていない。ARATとしてエンザルタミドを用いたENZAMET試験においては、ADT+エンザルタミド群がADT単独治療と比較して、OSで有意に良好であることが示されたが、そのサブグループ解析において、エンザルタミドとADTにドセタキセルを上乗せする効果はないことが示されていた。
一方、PEACE-1試験においては、ドセタキセル、アビラテロン、ADTによるtriplet治療がアビラテロンとADT治療と比較して OSにおいて有意に良好であることが示され、triplet治療に注目が集まった。ENZAMET試験でのtripletに関する結果はサブグループ解析、PEACE-1試験では標準治療群がADTから逐次ADT+ドセタキセルに変更され、その中でADT+ドセタキセル群を抽出し解析した結果であり、当初からプロトコール治療としてtriplet治療がデザインされた第Ⅲ相試験であるARASENS試験は最も高いエビデンスレベルとなるため、その結果がどうなるのか、注目を集めていた。その結果、ドセタキセル、ダロルタミド、ADTによるtriplet治療がOSを有意に延長することが示され、mHSPCの1st lineの標準治療として今後広く施行されることが期待される。