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Genitourinary Cancer Today 2022 No.3
ASCO-GU 2022:前立腺がん

#11 PROpel試験:転移性去勢抵抗性前立腺がん患者の一次治療としてオラパリブ+アビラテロン併用療法とアビラテロン単独療法を比較検討した第Ⅲ相試験

PROpel: phase III trial of olaparib and abiraterone versus placebo and abiraterone as first-line therapy for patients with metastatic castration-resistant prostate cancer
Fred Saad氏(University of Montreal Hospital Center, Canada)
更新日:2022年4月20日
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の一次治療において、オラパリブ+アビラテロンの併用療法はアビラテロン単独療法と比べ、画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)を有意に延長させたことが、第Ⅲ相PROpel試験の結果から明らかとなった。相同組換え修復(HRR)遺伝子変異の有無に関わらずオラパリブ+アビラテロン併用療法の治療ベネフィットが示された。これまでの非臨床試験のデータでは、PARP阻害薬がAR依存的な転写によりアンドロゲン受容体標的薬(ARAT)の活性を増加させることや、ARATがHRRの欠乏を誘発しPARP阻害薬への感受性を高めることが報告されており1-4)、併用による複合効果によって、HRR遺伝子変異の有無を問わず、より高い抗腫瘍活性につながるのではないかと期待されていた。

本試験の主な適格基準は、一次治療を施行予定のmCRPCで、HRR遺伝子変異の有無を問わず、アビラテロン前治療歴がなく、アンドロゲン除去療法施行中の患者であった。転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対するドセタキセル前治療歴のある患者、登録の12カ月以上前に投薬を止めていればアビラテロン以外のARAT前治療歴のある患者も許容された。層別化因子は、遠隔転移部位(骨のみ vs 内臓 vs その他)とmHSPC時のタキサン系薬剤治療歴(あり vsなし)であった。

796例が登録され、399例がオラパリブ(300 mg 1日2回投与)+アビラテロン(1,000 mg 1日1回投与)併用群(オラパリブ併用群)に、397例がプラセボ+アビラテロン(1,000 mg 1日1回投与)の群(アビラテロン単独群)に無作為化された。主要評価項目は治験責任医師の評価によるrPFS、主な副次評価項目は全生存期間(OS)、その他の副次評価項目は初回の後続治療または死亡までの期間(TFST)、二次治療での無増悪生存期間(PFS2)、奏効率(ORR)、HRR遺伝子変異の割合、健康関連QOL、安全性及び忍容性であった。

ベースラインの患者背景は2群間で差はなかった。年齢中央値はオラパリブ併用群69歳、アビラテロン単独群70歳、ECOG PS 0がそれぞれ71.7%、68.5%、症候性患者の割合(簡易疼痛質問票[BPI-SF]のスコア≧4、またはオピエート使用)が25.8%、20.2%、ドセタキセル前治療歴あり22.6%、22.4%、HRR遺伝子変異あり 27.8%、29.0%だった。

rPFS中央値は、オラパリブ併用群24.8カ月に対しアビラテロン単独群16.6カ月、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]: 0.54 – 0.81、p<0.0001)で、オラパリブ併用群が有意に延長した。rPFS率は12カ月時点でオラパリブ併用群71.8%、アビラテロン単独群63.4%、24カ月時点ではそれぞれ51.4%、33.6%だった。また盲検下独立中央判定においても、rPFS中央値はオラパリブ併用群27.6カ月に対しアビラテロン単独群16.4カ月、HRは0.61(95%CI: 0.49 – 0.74、p<0.0001)で、一貫した結果が得られた。

事前に設定したサブグループ解析では、年齢(65歳未満 、65歳以上)や遠隔転移部位、ドセタキセル前治療歴の有無、HRR遺伝子変異の有無を問わず、すべてのサブグループにおいてオラパリブ併用群が優位であり、交互作用は認められなかった。

OS中央値は2群とも未到達、HRは0.86(95%CI: 0.66 – 1.12、p=0.29)であった。
また、TFSTとPFS2はオラパリブ併用群が有意に延長しており(TFST:HR 0.74、95%CI: 0.61 – 0.90、nominal p=0.004、PFS2:HR 0.69、95%CI: 0.51 – 0.94、nominal p=0.0184)、長期的な治療ベネフィットが示された。

測定可能な病変を有する321例(40.3%)において奏効率が評価された。ORRはオラパリブ併用群が58.4%(うち完全奏効[CR] 4.3%)、アビラテロン単独群48.1%(うちCR 6.3%)であった(オッズ比1.60、95%CI: 1.02 – 2.53、nominal p= 0.0409)。

有害事象(AE)の発生率(全グレード)はオラパリブ併用群97.2%、アビラテロン単独群94.9%だった。グレード3以上のAEはそれぞれ47.2%、38.4%、AEによる死亡は4.0%、4.3%、AEによるオラパリブまたはプラセボの投与中止は13.8%、7.8%、アビラテロンの投与中止は8.5%、8.8%だった。オラパリブ併用群に発現した主なAEは貧血(オラパリブ併用群46.0% vs アビラテロン単独群16.4%)、疲労または無力症(37.2% vs 28.3%)、悪心(28.1% vs 12.6%)、下痢(17.3% vs 9.3%)、便秘(17.3% vs 13.9%)などだった。また心不全と動脈血栓塞栓イベントは2群で同等で、肺塞栓症がオラパリブ併用群で高い傾向があった(6.5% vs 1.8%)が投与中止には至らなかった。FACT-Pを用いて評価した健康関連QOLは2群で同等だった。


1)Schiewer MJ, et al. Cancer Discov. 2012; 2(12): 1134–49. 
2)Goodwin JF, et al. Cancer Discov. 2013; 3(11): 1254-71. 
3)Asim M, et al. Nat Commun. 2017; 8(1): 374. 
4)Li L, et al. Sci Signal. 2017; 10(480): eaam7479.
 
監修 横溝 晃先生のコメント
現在、日本では、オラパリブはHRR遺伝子変異の中でもBRCA1/2に変異のあるCRPCのみ保険適応がある。基礎研究の結果から、PARP阻害薬はAR依存的な転写によりARATの活性を増加させること、ARATがHRRの欠乏を誘発しPARP阻害薬への感受性を高めることが明らかとなり、HRR遺伝子変異陰性例でも効果が期待できると仮定し、第Ⅱ相試験(Clarke N, et al. Lancet Oncol. 2018; 19(7): 975‒86)を行い、その有意な結果を受け、今回PROpel試験として、第Ⅲ相試験が行われた。本試験の結果、HRR変異がある症例が、よりメリットがあるものの、HRR陰性例でもオラパリブ+アビラテロン治療が、アビラテロン単独治療より有効であることが確認され、今後CRPCの新たな1st line治療の選択肢の一つとなることが期待される。ただ、#GU22として発表されたMAGNITUDE試験は、PARP阻害薬としてニラパリブ*を用い、同じアビラテロンとの併用でニラパリブの上乗せ効果を期待した第Ⅲ相試験であるが、HRR変異がある症例のみ有効性が確認され、HRR変異陰性では有効性が確認できなかった。HRR陰性例でのPARP阻害薬の有効性についてはまだ議論の余地がある。

​*本邦では前立腺がん適応外