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Round Table Discussion
座談会

更新日:2023年3月9日

転移性尿路上皮癌における最新の治療戦略

ダイジェスト

◆開催日:2022年10月1日(土)

​◆開催場所:TKP東京駅カンファレンスセンター

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賀本 敏行 先生
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湯浅 健 先生
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松本 一宏 先生
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近藤 千紘  先生

〈座長〉
賀本敏行 先生(宮崎大学医学部 発達泌尿生殖医学講座 泌尿器科学分野 教授)
〈ディスカッサント〉
湯浅 健 先生(公益財団法人がん研究会 有明病院 泌尿器科 化学療法担当部長)
松本一宏 先生(慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 講師)
近藤千紘 先生(国立研究開発法人 国立がん研究センター 東病院 腫瘍内科)

●転移性尿路上皮癌に対する治療方針
 がん研究会有明病院の湯浅先生は、一次治療のGC(ゲムシタビン+シスプラチン)療法を4~6サイクル行い、SDの症例にはアベルマブ維持療法、PDの場合には二次治療としてペムブロリズマブ投与の後、EV(エンホルツマブ ベドチン)を使用した三次治療に移行している。国立がん研究センター東病院の近藤先生は、シスプラチン適格例にはGC療法、不適格の場合にはGCarbo(ゲムシタビン+カルボプラチン)療法をそれぞれ一次治療として実施している。SD以上であればアベルマブ維持療法、PDならペムブロリズマブによる二次治療、その後はEVによる三次治療を行っている。慶應義塾大学病院の松本先生も、一次治療の基本はGC療法であるが、年齢やPSに応じてdose-denseも含むMVAC(メトトレキサート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン)療法やGP(ゲムシタビン+パクリタキセル)療法も行っている。一次治療のGC療法で2サイクル目にCR、あるいはCRに近いPRの場合にはその時点でアベルマブ維持療法に移行するが、維持療法でPDとなった場合はGCに戻るケースもある。ただし、4~6サイクルでアベルマブ維持療法に移行しPDとなった場合は、GCに戻っても効果は見込めないため、EVに移行している。

●一次化学療法の維持療法 
 近藤先生
は、キードラッグとなるプラチナ製剤の長期かつ有効な投与を重要視しており、一次治療ではPDがないことを確認するため2サイクル毎に効果判定を行い、少なくとも4サイクル、副作用がなく継続可能な場合は6サイクルまで投与するのが望ましいと述べた。湯浅先生も同様に一次治療は4サイクルの投与を基本とし、副作用が強くない場合は6サイクルまで投与している。これに対し、松本先生は良好な反応を示した場合に2サイクル目でアベルマブ維持療法に切り替えるケースもあると述べた。早い段階での移行理由として、アベルマブ維持療法に切り替えた場合、患者の負担が軽減できることが挙げられる。いずれの施設も、プラチナ製剤を使い切るために一次化学療法を4~6サイクル投与した上でアベルマブ維持療法に移行するという方針を基本としている。なお、本ホームページで行ったアベルマブ維持療法の対象となる患者に関するアンケートでも、約半数弱の泌尿器科医が「GC療法を4サイクル以上行いSD以上の症例」と回答した。賀本先生は、各先生の意見を踏まえ、2サイクルで有効性を判定し、効果がありかつ忍容性が低い場合はアベルマブ維持療法に切り替えるのもひとつの手段であるが、プラチナ製剤は原則4サイクル、副作用の程度により6サイクル投与し、SD以上でアベルマブ維持療法に切り替えるのが基本になるとまとめた。

●二次治療以降の治療説明 
 
患者への治療方針の説明やタイミングに関して、各施設で様々な対応がとられている。湯浅先生は、治療開始の段階で行うものの詳細については説明せず、その後の二次治療、三次治療の存在や使用する薬剤の言及のみにとどめている。近藤先生は、最初に個別に面談を設け、時間をかけて治療方針について治療手段や費用を含めた説明を行い、患者がどこまでの治療を望むかを確認しながら仕事との両立などライフプランの希望も聞き取っている。松本先生は患者の抗がん剤治療への抵抗感に配慮して一次治療とアベルマブ維持療法までの説明にとどめ、再発を想定した内容を避けるため、それ以降の治療の説明は行っていない。

●ニボルマブによる術後補助療法
 
​ 松本先生は、術前化学療法(NAC)を行うことの多い膀胱癌よりも施行頻度の低い腎盂・尿管癌の方がニボルマブ術後補助療法に適しているとの考えを基に、病理結果に応じて選択しているが、良い結果が得られず解析例数も少ないため現在使用は検討中と述べた。近藤先生は、NAC後pT2以上の症例に対する術後補助療法を画期的と評価する一方で、NAC例と非NAC例を分けたデータ解析の必要性を指摘した。湯浅先生は、ニボルマブ術後補助療法についてのインフォームドコンセントの方法をNAC例と非NAC例で変えており、前者の患者にはニボルマブ術後補助療法を「する/しない」、後者には「術後補助療法をする/しない、する場合はニボルマブ/化学療法」の選択肢を提示している。

 治療選択肢の増えた現状について、転移性尿路上皮癌治療において有望となる次の薬剤は線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬というのがディスカッサントの共通見解であった。松本先生は、現在の治療薬は膀胱癌に比べ腎盂・尿管癌に対する有効性が低いため、FGFRにより今後治療の幅が広がる可能性があると期待を寄せるとともに、EVによる選択肢の追加により粘らない治療に方針転換できたことを大きな進歩と評価した。近藤先生は、FGFRの対象となる患者は非常に限られるため次の薬剤開発が急務であるとしつつ、いかにprecision medicineに繋げるかが重要と指摘した。湯浅先生は、ペムブロリズマブとEVによる併用療法や次世代治療薬出現の可能性に期待したいと述べた上で、EV後の癌免疫療法(IO)や術前の効果的なIO投与方法の検討が必要であるとした。座長の賀本先生は、放射線治療後のIOの有効性についても言及し、今後治療の選択肢が多岐にわたる中、コンセンサスをいかに形成していくかが重要であると本座談会を締めくくった。
まとめ
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