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Genitourinary Cancer Today 2021 No.3
ASCO 2021:膀胱がん

#4503 筋層浸潤性膀胱がん患者における、選択的膀胱温存とゲムシタビン+シスプラチン+ニボルマブ併用の第Ⅱ相試験:HCRN GU 16-257試験

Phase 2 trial of gemcitabine, cisplatin, plus nivolumab with selective bladder sparing in patients with muscle- invasive bladder cancer: HCRN GU 16-257
Matthew Galsky氏(Icahn School of Medicine at Mount Sinai, USA)
更新日:2021年8月2日
筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者を対象に、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)とゲムシタビン+シスプラチン+ニボルマブ併用*を施行し臨床的完全奏効(cCR)の達成率を検討した第Ⅱ相HCRN GU 16-257試験の結果、cCR達成率は48%に上ったことが明らかとなった。

シスプラチンベースの術前化学療法により、MIBC患者の30~40%が病理学的完全奏効(pCR)を達成し、そのような患者では転帰が向上することが示唆されている1)が、病理学的病期は膀胱切除術を施行しなければ明らかにならない。根治的膀胱切除術は尿路再建術を必要とする大規模な手術である。一部のMIBC患者は、TURBTと全身化学療法の併用により膀胱を温存した長期生存が可能となるが、シスプラチンベースの術前化学療法を検証した前向き試験が少ないことや、cCRを評価、定義する手法が確立されていないこと、局所再発患者におけるサルベージ膀胱切除術の意義に対する理解が不足していること、などが原因で一般に普及していない。

本試験では、シスプラチンベースの化学療法とニボルマブの併用後に、臨床病期の再分類を行い、cCRの達成率を同定するとともに、cCRに治療ベネフィットを予測する能力があるかどうかを検討した。

適格基準は、シスプラチン適応のcT2からT4aのN0M0膀胱がんを有することであった。患者は、ゲムシタビン+シスプラチン+ニボルマブの投与を4サイクル受けた後、膀胱のMRIまたは尿細胞診、膀胱鏡検査および生検により臨床病期を再評価され、cCRを達成した患者は膀胱切除術を受けずにニボルマブ単独投与を4カ月施行後に経過観察をするか、または膀胱切除術を施行するかの選択が可能であった。cCRを達成しなかった患者には膀胱切除術を施行した。

cCRの定義は、4サイクル後に①画像評価で異常がないこと、②尿細胞診で異常がないこと、③生検でcT0/Taであることとした。

主要評価項目は、cCR率および治療ベネフィットに対するcCRの予測能力、の2項目であった。ここでの治療ベネフィットは、経過観察を選択した患者では2年間の無転移生存、膀胱切除術を施行した患者ではpCRと定義した。また主な副次評価項目として、TURBT時に採取したDNA損傷応答修復(DDR)の遺伝子パネル(ERCC2、FANCC、ATM、RB1、TMB)が、cCRの予測能力に与える影響も検討した。今回の発表では、cCR率と長期転帰の中間解析、およびDDRパネルとcCR率との探索的関連性について報告した。

ベースラインの患者背景は、男性60例(79%)、年齢中央値69歳、cT2 43例(57%)、cT3 24例(32%)、cT4 9例(12%)だった。

76例が組み入れられ、そのうち64例が臨床病期の再評価を受けた。64例中31例がcCRを達成し、cCR率は48%(95%信頼区間: 36-61%)であった。cCRを達成した31例中30例がニボルマブ単独投与を選択し、1例が膀胱切除術を選択した。

cCR達成後に局所再発した患者は9例(うち1例は膀胱切除術を選択した症例)で、このうち局所再発後に膀胱切除術を受けた6例の病理学的病期は、ypT0N0、ypTaN0、ypTisN0、およびypT4N1が各1例ずつ(各17%)、ypT2N0が2例(32%)で、約半数がT1N0未満であった。一方、cCRを達成できず、すぐに膀胱切除術を施行した28例における病理学的病期は、ypTanyN+が9例(32%)、ypT0N0が2例(7%)、ypTisN0が5例(18%)、ypT1N0が3例(11%)、ypT2N0が5例(18%)、ypT3N0が3例(11%)、ypT4N0が1(3%)であった。

本試験では安全性に関して、試験中止ルールを設けていた。全患者においてグレード3以上の免疫関連有害事象が高発現となった場合とcCR達成患者において筋層浸潤性再発および/または転移再発を高頻度で認めた場合であったが、いずれの基準にも至ることはなかった。有害事象プロファイルは、ゲムシタビン、シスプラチン+PD-1阻害薬を検討した他の研究で報告されたものと一致していた。

DDRパネルとcCR率の探索的解析では、TMB(≧10 mut/Mb)とERCC2変異がcCRまたはpCRと有意に関連していた(それぞれp=0.02)。遺伝子変異と膀胱温存長期生存におけるcCRの予測能力との関連性は、より長期間の観察をもって検討していく。

*本邦適応外

1) Waingankar N, et al. Urol Oncol. 2019; 37(9): 572.e21-572.e28.
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監修 神波 大己先生のコメント
シスプラチンベース化学療法に対する免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの上乗せ効果がどの程度あったのかは本報告から読み取ることはできないが、48%というcCR率自体は驚くべき数字とは言えないかもしれない。
むしろ最大の期待は免疫チェックポイント阻害剤を併用することによるdurable responseであり、それにより長期の膀胱温存生存期間が達成されることであろう。また、DDR変異はプラチナ感受性と関連し、またTMBを増加させるという理論的背景が実際に長期膀胱温存生存に結びつくのか注目して今後の報告を待ちたい。
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