GCtoday_web_back.jpg

Genitourinary Cancer Today 2022 No.4
ASCO Annual Meeting 2022:前立腺がん

#5065 転移性去勢感受性前立腺がんにおける腫瘍内科医および泌尿器科医の治療選択理由:患者カルテとリンクした米国医師の調査

Reasons for oncologist and urologist treatment choice in metastatic castration-sensitive prostate cancer (mCSPC): A physician survey linked to patient chart reviews in the United States.
Stephen Freedland氏 (Cedars-Sinai Medical Center)
更新日:2022年9月2日

転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者においてアンドロゲン除去療法(ADT)に新規ホルモン療法(NHT)を併用するtreatment intensification(治療強化)を行うかどうかは、忍容性に対する見解や有効性に関するエビデンスが不足しているとする認識、医療保険の補償範囲により影響を受けることが、米国の腫瘍内科医と泌尿器科医に対する調査で分かった。また、ガイドラインに則っていないPSA値の低下目標が、治療強化を行わないことと関連している可能性も示され、mCSPC患者における治療強化に関する教育の必要性が示唆された。

ガイドラインでは、mCSPC患者においてADTにNHTか化学療法を追加する治療強化が推奨されているものの、米国の実臨床では多くの患者がADT単独か第一世代の非ステロイド性抗アンドロゲン薬(NSAA)との併用を受けている1,2)。本研究では治療強化が行われていない背景を理解するため、月に2名以上のmCSPC患者を診療し、処方決定に関わっている腫瘍内科医65人と泌尿器科医42人にオンライン調査を行い、処方した治療法とその選択に至った理由、およびPSA値の低下目標などを質問した。解析には2018年7月~2022年1月にmCSPCと診断され、3カ月以上全身治療を受けた患者621例の医療記録を使用した。

621例の患者のうち347例(56%)が腫瘍内科医、274例(44%)が泌尿器科医から治療を受けていた。

一次治療では、ADT単独が52%を占め、ADT+NHT は26%、 ADT+NSAAは18%、ADT+化学療法±NHTは4%に留まっていた。回答の多かった治療選択理由は「忍容可能/有害事象が少ない」が治療強化集団(187例)で65%、非治療強化集団(430例)で59%、「ガイドラインで推奨されているから」がそれぞれ61%、53%、「経験/熟知した治療法だから」が48%、40%、「良好なQOLが提供できるため」が40%、37%で治療強化を行ったかどうかによる違いは認められなかった。

一方、一次治療で治療強化を行わず、後続治療においても新規アンドロゲン療法または化学療法を受けなかった患者(207例)でNHTが処方されなかった理由は、忍容性の低さ(38%)、生存向上に関するエビデンスが不足している(31%)、医療保険で償還されない(26%)、NHTの治療シークエンスに関する理解不足(21%)などだった。

PSA値の低下目標を75~100%としていたのは、泌尿器科医の53%に対し腫瘍内科医は27%に過ぎなかった。一方、50%未満を目標とした割合は腫瘍内科医で42%に上り、泌尿器科医は8%だった。また低下目標を75~100%とする医師は50%未満を目標とする医師と比べ、一次治療で治療強化を行う可能性(オッズ比[OR] 1.63、p=0.034)、および一次治療や後続治療、またはその両方で治療強化を行う可能性(OR 1.93、p=0.002)が有意に高く、低下目標が大きいほど、治療強化を行う可能性が高いことも示唆された。

1)Freedland SJ, et al. Ann Oncol. 2021; 32(suppl 5): S650-S651.

2)Freedland SJ, et al. J Clin Oncol. 2021; 39(suppl 15): Abstract 5073.

 
監修 橋本 浩平先生のコメント

本邦と米国では医療制度の違いはあるものの、mCSPCにおける治療選択理由を検討した興味深い結果である。米国の実臨床においてUpfront 新規ホルモン療法または化学療法といった治療強化を行った割合が約30%に留まり、ADT単独およびADT+NSAAの割合が依然として多いことが特徴である。治療強化を行わない理由として多かった忍容性の問題、QOLに関するエビデンス不足などは、今後クリアすべき課題である。一方で、泌尿器科医と腫瘍内科医によりPSA値低下目標の違いはあるが、PSA値低下目標の高さ(≧75%低下)と治療強化選択の関連性が示唆され、治療強化によるPSA値低下の意義を示していくことが重要となる。