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Genitourinary Cancer Today 2022 No.4
ASCO Annual Meeting 2022:膀胱がん、胚細胞腫瘍

#5007 胚細胞腫瘍における生殖細胞系列の遺伝的特徴の解明:遺伝子検査と臨床管理に対する意義

Defining germline genetics of germ cell tumor: Implications for genetic testing and clinical management.
Hong Truong氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)
更新日:2022年9月2日

胚細胞腫瘍(GCT)の患者集団において生殖細胞系列シークエンシングを施行した単一施設研究から、縦隔GCT患者の17%が、がん素因遺伝子に生殖細胞系列病的バリアント(PGV)を保持することが明らかとなった。TP53が縦隔GCTの罹患のしやすさと関連する浸透率の高い遺伝子である可能性も示された。これらの患者は成人期の早期に発症する傾向があることから、遺伝子検査が検討されるべきであると研究グループは考察した。

解析コホートは、2015年4月~2020年12月にMemorial Sloan Kettering Cancer Centerで310を超える遺伝子パネルで次世代シーケンシングを行った縦隔GCT患者69例と精巣GCT患者408例の計477例であった。遺伝性腫瘍の原因に関連する臨床的に有用な遺伝子を同定し、病的(Pathogenic)または病的の可能性がある(Likely pathogenic)バリアント(P/LPバリアント)に関して、疾患部位、組織学、既往歴、家族歴などの臨床的および病理学的特徴との関連性を両側フィッシャーの正確確率検定で検討した。

患者の診断時年齢中央値は30歳、非セミノーマが81%、進行性GCTが93%で、このうち低リスクが48%、中リスクが15%、高リスクが37%だった。GCTの家族歴のある患者は精巣GCT患者で7%、縦隔GCT患者では0%、精巣GCT患者のうち両側の割合は4%だった。

 

PGVは52例(11%)で検出された。4例は2種類のPGVを保持しており、計56種類のPGVが同定された。このうち高浸透率のバリアントは11種類で患者全体の2%が保持し、BRCA1/2(3例、0.6%)、PALB2(3例、0.6%)、TP53(2例、0.4%)が含まれた。中程度の浸透率のバリアントはCHEK2(6例、1.3%)とATM(4例、0.8%)を含む14種類で、3%が保持していた。低浸透率のバリアントは31種類で、7%が保持していた。

高浸透率と中浸透率のバリアント25種類のうち、縦隔GCT患者からは高浸透率のTP53が2例で同定され、CHEK2ATMPMS2およびSDHBが1例ずつに検出された。精巣GCT患者ではCHEK2(5例)、ATMPALB2(各3例)、BRCA1(2例)、BRCA2BRIP1NBNHOXB13BARD1SDHA(各1例)が同定された。PGVの機能性を推測するため、腫瘍のバイアレリック不活性化を評価した結果、CHEK2ATMHOXB13BARD1、およびTP53にバイアレリック不活性が認められた。また、同コホートで3例以上に発現したCHEK2ATMPALB2の対立遺伝子頻度を一般集団のものと比較したところ、調整前の解析でCHEK2PALB2がGCTの素因との有意な関連性を示したが、調整後は有意差がなくなった。

次にPGVと臨床病理学的特徴との関連性を評価した。P/LPバリアントを保持する割合は精巣GCT患者が9.8%(40/408例)に対して縦隔GCT患者は17%(12/69例)と、縦隔GCT患者が高い傾向があった(p=0.09)。組織学的特徴(セミノーマ vs 非セミノーマ)、GCTの家族歴、および精巣GCT患者における両側 vs 片側において、PGVの発現との有意な関連性を示す因子はなかった。

 
監修 近藤 千紘先生のコメント
胚細胞腫瘍の家族性発症は前立腺がんに次いで多いとされており、DNA修復遺伝子異常が多く検出される。本研究では生殖細胞系列遺伝子を網羅的に調査した研究であり、CHEK2などの遺伝子変異を多く認めた。精巣腫瘍と比べ縦隔腫瘍でこれらの遺伝子異常の検出率が高い傾向を認めたのは意義深い。一方で治療学的に標的となりうる遺伝子異常は少なく本疾患の治療開発の難しさを再確認した。